第五章
[8]前話
「実は昨日同じクラスの子から告白されまして」
「受けたのね」
「そうなんです」
このことを気恥かしそうに言ったのだった。
「それでやっとわかりました」
「相手の子が同じだったのね」
「お顔を真っ赤にさせていて」
「そうよね」
「あの時の私と本当に一緒でした」
「優木さん必死だったわね」
「そうでした」
小学校の時の自分はとだ、沙織自身も認めた。
「チョコを渡すだけでも」
「そうだったわね」
「あの時の想いは本気でした」
「そう、だから痛かったのよ」
「胸が、ですね」
「左のね」
「そういうことだったんですね」
沙織はそのことを知った顔で夏子に応えた。
「私も」
「そうよ、けれどあの時池田君には」
「好きでしたけれど」
「自然に、だったわね」
「中学校に入って。池田さんとはレッスンの日が変わって」
「それでだったのね」
「消えました」
その想いがというのだ。
「実際にそうなるんですね」
「そう言われてるわね」
「はじめての想いは」
「そうしたものよ、けれどあの時の想いは覚えているわね」
「はい、はっきりと」
「ならその想いを忘れずにね」
そのうえでとだ、夏子は沙織に言った。
「生きていってね」
「わかりました」
沙織は素直な微笑みに戻って夏子に応えた、中学生になった彼女は小学生だった時よりも背は高くなり髪の毛は伸びて顔も大人のものに近付いていた。それはまだ何も知らない幼虫から蝶になろうとしている顔だった。
左胸 完
2016・2・17
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