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アバヤ
第四章
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「本当にね、いつも着ているアバヤも」
「今日は正装です」
「運命の日の」
「そうしたものになりますね」
「そうね、それじゃあ」
 ここまで話してだ、そしてだった。
 サウサンは女の使用人の一人が開けた扉から部屋の外に出た、そこにはルクマーンが男の使用人達を連れて待っていた、そのうえで。
 彼女の前に来てだ、一礼の後微笑んで言った。
「では」
「ええ、今からね」
「旦那様の下に参りましょう」
「その方は今は」
「こちらにです」
 サルサール家の屋敷にというのだ。
「いらしています」
「お話の通り」
「はい」
 まさにという返事だった。
「もういらしています」
「そうなのね」
「では」
「そちらにね」
 行くとだ、サウサンはルクマーンに答えてだった。
 応接の間に赴いた、するとそこにだった。 
 アラブの正装、トウブを来た青年がいた。長身でしっかりとした体格に浅黒い肌、そして黒髪で彫のある鼻の高い引き締まった顔の青年だった。
 完全にサウサンの好みだった、サウサンは目だけを出している状況で見蕩れていたが。
 父に声をかけられて我に返ってだった、そうして。
 彼と話をした、その後で。
 普段着に戻ってだ、サウサンは部屋の中でルクマーンにこんなことを言った。
「凄く残念よ」
「何故ですか?」
「だってあんな格好いい人にね」
 席に座っての言葉だ、横には絹のカーテンの天幕のベッドがある。
「お顔を見せられなかったから」
「だからですか」
「凄くね」
 それが為にというのだ。
「本当に残念よ」
「それはどうもです」
「我儘かしら」
「かつ子供っぽいです」
 そうしたことだとだ、ルクマーンはサウサンに答えた。
「そう思います」
「そうかも知れないけれど」
「ああした時の服はです」
「アバヤでないと駄目よね」
「我が家のしきたりであり」
「アラブのね」
「基本的なしきたりですので」
 それ故にというのだ。
「そこは納得して下さい」
「わかったわと答えるしかないわね」
「はい」
 まさにという返事だった。
「左様です」
「ではわかったわ」
「その様に」
「ええ、けれどお顔を見せられるのは」
「結婚してからです」
「これでも顔にはそれなりに自信があるから」 
 だから顔を見せたかったのだ、自分の武器を見せたいというのは人間それも女の子ならばこうした時に自然に思うことだ。
「その時までってことね」
「左様です、そしてその時に備えて」
 ルクマーンはサウサンにこうも話した。
「ご自身を磨かれて下さい」
「顔だけでなく」
「はい、内面も」
「そしてその為にも」
「学問や習いごともです」 
 これまで通りというのだ。
「お励み下さい」
「わかって
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