休日ククールと容赦ないトウカ
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ある日の、よく晴れたトラペッタの草原にて。
「ねぇククール」
「……なんだ」
我らがリーダーエルトは目の前で次々と槍の技を出し続け、風を切り裂く音は聞いていて気持ちがいい。かれこれ一時間は続けているのにほとんど息を切らさない様子は流石としか言いようがない。それぐらいできないとこの旅を切り抜けられなかったとも言うが。
ちなみにゼシカは俺と同じくエルトの演舞じみた訓練を見ていて、ヤンガスはトウカとどっかに行ってしまった。大方スライムでも狩っているんだろう。羽休めにやってきたトラペッタ地方の弱い魔物相手に遅れをとるはずがないしな。
「ククールってトウカのどこが好きなの?」
「そうよ、あたしも気になってたの」
…………。お前ら実は暇だろ?
「暇じゃないしっ」
「あんたってもっとわかりやすい女の子を好きそうなのにね」
わかった、少し話してやるから俺に当たるぎりぎりまで槍を振るのはやめようなエルト。だんだん誰かに毒されてないか?砂塵の槍のせいで砂がだいぶ巻き上がって目が痛いからやるなら別のやつでやってくれ。いいな?
「オッケー。じゃあ僕の、夜眠れないぐらい気になること話してよ」
「嘘吐け」
「バレた?」
あははと笑う姿は普段の俺達を率いるリーダーらしい苦労人というよりは近くで腰を下ろして催促しているゼシカに似たものを感じるんだが。年相応だな、普段もそうしときゃいいのによ。
「僕はいいから。トウカとは長い付き合いだけど旅立ってからかなり言動、変わってるんだよね。まだトロデーンにいた時の貴族然とした姿の方がまだしも可愛いと思ってさ」
「……あの笑顔を見てなにか思わなかったのか?」
「あー……童顔だよねトウカ」
とても二つ年下とは思えないが、そこじゃない。行動の端々が妙に世間知らずで子供っぽい時があるがそうじゃない。
「黒い瞳に吸い込まれそうだった事は?性別のわからない人間の髪の毛に触れたいと思った事はあるのか?」
「……それ、ひとめぼれって事かしら」
「…………」
「照れ顔のククールなんて見たくないんだけど」
話せと言ったのはそっちだろ。ともかくトウカの浮かべる表情を見ていたいとでも言えば満足か?頭撫でたら眩しい笑顔が返ってくるがそんなレディ今までいなかったし、大抵俺の顔を見てイチコロだったからな。
なんて言いつつ髪の毛をかきあげるとエルトが突然ザクッと槍を地面に突き刺し、さっきまで呆れたり納得顔だったりと忙しかった表情が消えた。……そのまま見据えられると背筋がゾクッとする。
「顔と身長の話しないでくれる?」
「身長……?俺身長の話なんて」
「……いいよ、今回は何も言わないから。話してくれてありがとうね。僕もちょっとひと狩り行ってくるからさ」
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