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百人一首
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第三十四首

                第三十四首  藤原興風
 長生きをするというのも考えものだとも思う。そう思わざるを得ないことになってしまっていた。気づけばもう。
 何故ならあまりにも長く生きると周りがいなくなってしまうからだ。
 親しい友人達は誰もいなくなり。残っているのは自分だけ。周りには誰もいなくなって本当に一人ぼっちになってしまっていた。
 残った自分の前にいるのはたった一人。
 一人と言っていいのかどうかわからないけれど。
 松が前にある。今では松だけが自分の前にいてくれる友達だ。たった一人の友達なのだ。
 そんな松を有り難く思う。何しろ自分の前にいてくれるただ一人の友達となってしまったから。
 松と昔話ができるわけではないけれど。それでも。それでも有り難いと思うのだった。
 松が前にいてくれるだけでとても有り難い。その松を見ながらふと口ずさんだのは歌だった。その歌を今自分でも詠う。誰もいないけれど松に聞かせるつもりで詠った。

誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに

 たった一人残ってくれた古い松を前に見つつ詠ってみた。詠ってみても松は何かを言ってくれるわけではないけれど。それでも今は詠ってみた。この友達の為にも。何も言ってくれない友達でもそれでも大切な友達なのだと思う。周りに誰もいなくなってしまった自分だけれどこの松だけは残ってくれた。このことに心から感謝しつつ。今はこの歌を詠って己の心の証とするのだった。


第三十四首   完


                 2009・1・1

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