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百人一首
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第二十六首

                 第二十六首  貞信公
 秋に小倉山を登るとそこで風を感じた。それは紛れもなく秋風で香りさえ感じられるものだった。まずはそこで秋を深く感じ取った。
 そして桂川に行けば紅葉があった。川の流れを紅に染める紅葉を見ることができた。それはとても奇麗な紅で見ているだけで実に美しいものがある。
 紅葉はただ紅であるだけでなく陽の輝きも受けてさらに美しい光を見せている。
 その紅の輝きを見つつ思うのはささやかなことだけれど。それでも静かに思うのだった。
 若し紅葉に心があるのなら。人と同じように心がそこにあるのなら。
 散らずに永遠にそこにあって。その美しい姿をそのままにしておいて欲しい。そう思うのだった。
 あの人にもこの美しさを見てもらいたいから。この紅に染まった美しい世界を見てもらいたいから。だからずっとここに留まって欲しいと。そう思うのだった。
 その気持ちはやがて歌心となって。静かに口から出て来た。

小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびのみゆき待たらむ

 歌となって出て来たこの気持ち。それを書き留める中にも秋の紅葉が目の前に広がっていて。それでさらに思うのだった。この美しさを是非あの人にも見てもらいたいのだと。


第二十六首   完


2008・12・24

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