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百人一首
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第二十五首

                 第二十五首  三条右大臣
 どうしても会いたいというのに会うことができないので。
 それで身を焦がしどうしようもなくなっている。
 この気持ちを我慢できずに思うのだった。思わずにいられないあまりにも苦しく抑えきれない気持ちである。
 逢坂山、愛しい人に逢えるというその山のことを。その山のことを思った。
 共に一夜を過ごせるという小寝蔦。そういった場所のことを。ここのことさえも心に思った。やはり思わずにはいられなかったのだ。
 思わずにいられない。そこにいけばあの人に会えるのではないのかと。
 けれど会えない。どうしても会うことはできない。二人で一夜逢うことが夢にさえ出て来るというのにそれができないでいるのだった。
 それが呪縛であるかのように。出会うことはできない。出会えたとしてもいつも誰かがいて。二人きりで会うことはできない。その苦しみに耐えられないので。
 胸が潰れそうになってしまう。愛さずにいられない、会わずにいられないのにどうしても。
 そのあまりにも辛い気持ちが今歌となって出て来た。一つの歌に。今口から。

名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな

 歌にもその気持ちが満ちていて。苦しい歌だった。どうしてもこの苦しみから逃れられずにどうしようもなくて。
 苦しみはさらに募っていく。胸どころか心まで潰しそうだった。その気持ちに耐えられないでいる今。自分でもどうしていいのかはわからなかった。さまよう気持ちはそのまま荒れ狂うまでいかず留まりつつ己を責め苛み続けどうにもならなくし続けてしまっていて。心が散り散りに乱れていく中で祈りもするのだった。その儚い想いに。


第二十五首   完


                2008・12・23

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