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百人一首
17部分:第十七首

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第十七首

               第十七首  在原業平朝臣
 秋に竜田川に行ってみると川は青ではなかった。
 紅葉が川にまで落ちてそれで紅に染まっている。
 それはもう衣を着ているようで。川が絞り染めの錦帯を着ているようだった。
 こんな川は彼にしろ今まで見たことも聞いたこともなく。おそらく神代の世界にもないであろうとさえ思われるものであった。
 その川を見て恍惚とさえなり。自然に歌が口に出てしまうのだった。

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは

 こう歌を詠った。静かに歌うその間にも紅葉が川を染めているのがわかる。
 紅の他に見えるものは虹。水の輝きと合わさって虹色の光もまた見えるのであった。その輝きを見て目を細めているとそこに供の者が声をかけてきて。彼が今詠んだその歌に対して言うのであった。
「この歌なのですね」
「あっ、はい」
 その声に応えて顔を向ける。
「今しがたできたものですよ」
「紅葉のものですか」
 それが紅葉を詠ったものであることを彼もまたすぐにわかったのだった。
「これが」
「如何でしょうか」
 今は彼に応える。やはりその目を細めさせて。紅の川を見つつ目を細めさせている今の彼の心は何時になく澄み切ってさえいる。川のあまりもの美しさにその心まで澄み切らさせられたのである。


第十七首   完


                   2008・12・15

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