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百人一首
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第一首

                第一首  天智天皇
 その時帝は田を御覧になられていた。宮中を出られ御覧になられる田はもう実り秋に相応しい黄金の色を見せていた。
 しかしそこで帝は見られたのだった。一軒の小さな仮小屋を。そしてそこで一人番をしている年老いた役人を。
 彼は薄い服を着てそこにいた。秋の米の実りを見守りつつそこにいる。
 夜はもう寒く凍えそうである。しかし彼はそれでもそこにいて番をしているのだ。
 もう米は実り後は収穫を待つだけだ。しかしそれまで彼はここで番をしなくてはならないのだ。
 秋の夜に凍え朝になると露が冷たい。その露が衣まで濡らしてしまいそれもまた年老いた身体を鞭打つ。実に厳しい番である。
 一人で、年老いた身体でも一人で昼も夜もそこにいて。寒さに震えながら番をしている。それが終わるのは実りが刈られてから。それまではずっとここにいなければならない。
 帝はその老人も御覧になられていた。ただ一人そこにいる老人を。しかしふと思い歌を口ずさまれた。その歌とは。

秋の田の かりほの庵の 苔をあらみ 我が衣手は 露に濡れつつ

 帝は一首詠まれると周りの者に声をかけられた。そしてこう告げられるのであった。
「あの者に衣を」
「衣をですか」
「そうじゃ。せめてあの番が終わるまでな」
 こう周りの者達に命じられたのであった。
 老人は今も粗末な仮小屋で番をしている。しかしその彼に帝から暖かい服が贈られて。
 それだけでも何とか暖かくなって番ができるようになったのだった。冷たい秋の田の番は。確かに年老いた身体にとっては辛いものだけれども。帝はその老人に心を向けられた。それが今この歌となって残っているのである。


第一首   完


                   2008・11・29

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