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アインクラッド篇
movement V 迫り来る狂気の行進曲
死神降臨
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!?こうなったら……」

そう言って一目散に走り出すロザリア。森に入ってから転移結晶で逃げるつもりだろう。

「させるかってんだ。」

転移結晶を掲げたロザリアにナイフを投げるべく構える、視界の端ではキリトがロザリアを確保しようと動くのが見えた。間に合う。そう判断した次の瞬間、恐怖を伴った猛烈な悪寒に襲われた。

(これは………!?)

街でも感じたこの感覚。これは………この感じは…………!?

「っ!?駄目だ!!そっから離れろぉぉ!!!」

「はぁ?何をいっ………て………?」

そこから先は続かなかった。皆の視線は、転移結晶を握りしめたまま地面に転がったロザリアの右手と、それを切り落とした漆黒の刃に釘付けになっていた。

最初の反応はロザリアだった。

「っ、アッグゥゥゥゥ!!?あ、て、手が、う、アアアアアアアア!!?」

先を失った手首を握り締め、まるで痛覚があるかのようにのたうち回る。その時点で、黒い刃の主が誰なのか、俺には容易に想像がついた。

次に刃が襲ったのはキリトだ。流石の反応速度でその一撃をかわすと、バックジャンプしつつ背中の剣を引き抜いている。

「あら?思ったよりやりますのね。無傷で避ける事までは予想してませんでした。」

漆黒のフード付きマントを纏い、やはり黒で統一された服装は否応なしに死を想起させる。得物は柄から穂先まで漆黒の金属で統一された長槍。140cmにも満たない死神(いもうと)が、木陰から音もなく現れた。カソールは当然オレンジだ。

「ご機嫌麗しゅう、お兄様。お元気そうでなによりですわ。」

「誰だ……アマギ、知り合いか?」

「………がれ。」

「うん?」

「下がれ。コイツの狙いは俺だ。シリカの方を頼む」

ブラッドクロスを構え、黒ずくめの妹を見据える。

「久しぶりだな、アマナ。半年振りか?」

「ええ、お兄様の評判は聞いていましたよ?」

クスリ、と微笑むアマナ。その仕草は年相応の可愛らしさに満ちているが、その事がより、彼女の狂気を際立たせていた。

「改めて自己紹介を。レッドギルド《(ラフィン)棺桶(コフィン)》副長、『死神』アマナと愛槍の《アイグロス》ですわ。どうも、よしなに。」

その名乗りに、少なくない衝撃を受ける。

「……意外だな。お前は集団には属さないと思ってたが。」

「人殺しには人殺しなりに色々あるんですよ。」

そう言うアマナの口許は、普段と変わらない笑みを浮かべている。

「さぁお兄様?お喋りもいいですけど、そろそろ良いですか?私、もう抑えきれなくて………。」

上気した顔で言い放ち、槍を振り回すアマナ。ギラギラ輝くその瞳に明確な殺気が宿るのを見て、俺は無言で剣を構えた。
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