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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十八話 再起へ
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、そんなことが許されるのですか? 味方を置き去りにして逃げ帰ってきたと言われているのです、ご存知でしょう?」

「だからこそ貴官たちは軍の要職に就かねばならんのだよ、ウランフ提督。貴官達の取った行動は正しかったのだ、それを眼に見える形で証明しなければならん……」
「……」

「貴官達への批判が何故起きているか、考えてみた事があるかね? あれは意図的に行なわれたものだ、軍の主戦派達の手によってな」
「軍の主戦派? どういうことですかな、本部長?」

ビュコック提督が訝しげな声を出した。私も同じ思いだ、軍の主戦派? あれだけの大敗を喫しながら未だ何かしようというのだろうか? 思わずトリューニヒトに視線が動く。この男がまた何か動いているのか……。

「主戦派と言っても色々と有るのです、ビュコック提督。今回の遠征を起したのは主として宇宙艦隊司令部を中心とした連中だった。だが軍には他にも主戦派と呼ばれる連中が居る」
「……」

「宇宙艦隊司令部を中心とした主戦派は今回の敗戦によって著しくその勢力を減じた。しかしそれ以外の連中達が軍の要職を貴官達が占めることを恐れ誹謗している」
「……」

おぞましい話だった。あれだけの敗戦をして、それでも足りずに戦争をしようというのだろうか。それともただ権力が欲しいというのだろうか。

「なるほど、本部長のお話は判りました。ですがそれならばなおさら我々が軍のトップに就く、そのような事が許されるのですか? 小官には今一つ信じられんのですが」

そう言うとビュコック提督はトリューニヒトの方へ顔を向けた。自然と皆の視線がトリューニヒトに集中するが、トリューニヒトはごく平然と座っている。小面憎いほどだ。

ビュコック提督の心配はもっともだ。主戦派が動いているというなら、その黒幕であるトリューニヒトが関与していないはずは無い。つまり彼はこの人事に賛成していないという事だ。評議会議長が賛成しない人事など有り得ない。

私達の視線が集中する中、トリューニヒトが微かに苦笑を浮かべながら口を開いた。

「君達が何を心配しているか、私には分かる。だがその心配は無用だ、私がこの人事に反対する事は無い。私達はこれから協力し合って同盟を守っていく事になるだろう」

何を言っているのだ、この男は。協力し合って同盟を守る? 私に新しい番犬にでもなれと言っているのか? 冗談じゃない、そんな事はまっぴらだ。私はヨブ・トリューニヒトが宇宙で一番嫌いなんだ。私は思わず目の前のトリューニヒトを睨んだ。本部長は何故こんな男をここへ呼んだのだ? 私にはさっぱり分からなかった……。



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