暁 〜小説投稿サイト〜
一人のカタナ使い
SAO編?―アインクラッド―
第二章―リンクス―
第19話 暗夜に潜む者
[12/12]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
か……君もなかなか面白いけどね。俺は君にはちょっかいは出さないよ、先約がいるからさ。オレはしっかりルールを守る良い子ちゃんなんだ」
 気がかりなセリフを出しながら、ザドはローブの下から片手で持てるほどの小さな何かを取り出した。
「させるか!」
 正体は転移結晶だと予測し、僕は駆け、キリトは腰からピックを取り出し投擲する。
 だが、予想は大きく外れ、ザドはその持っているものを地面に向かって叩きつけた。次の瞬間、視界が一気に真っ暗に染まった。
「しまっ……煙幕??」
 反射的に顔の前に右手を出して顔を守り、目を細める。かなり広範囲に煙は発生しているらしく、数メートル離れている場所からソラの驚きの声が上がった。
 近くに味方がいるかもしれないので、闇雲にカタナを振り回すこともできず、ただ立ち尽くしていると、どこからともなく声が聞こえた。
「じゃあ、機会があればまた会おうね――《疾風》くん」
 聞こえたあと、次いで転移が起動するサウンドエフェクトを耳が拾った。
 数秒後、ようやく煙が晴れる。周りには全員が武器を持ち、立ち尽くしていた。ザドの姿はそこにはない。
「く、そぉ……っ!」
 どうしようもない気持ちが湧き上がるのを感じながら、カタナを鞘にしまう。相手は僕の索敵スキルを上回るほどの隠蔽スキルを持っているのだ。捜索は不可能だろう。
 深く息を吐きながら、気持ちを何とか切り替える――全員無事だったんだ、良しとしよう。
「これでようやく終わり、かな」
「ひとまずはな」
 キリトが僕の方へ来ながら、片手剣を背中の鞘にしまう。そして、僕の後ろにある木に刺さっているピックを抜いて、腰のベルトに戻した。
「今日はありがとね、キリト。キリトがいなかったら、きっともっと酷いことになってたよ」
「いや、それよりもユウ、厄介なプレイヤーに絡まれたな」
「それを言うなら、キリトもでしょ? あの人の言い方からしてキリトにも結構厄介なプレイヤーが付きまとってるっぽいけど」
「……まあ、思い当たらない節がないわけじゃないな……」
「というか、もともと僕もキリトも少なからず憎まれてるわけだし……」
「そうなんだよな〜……」
 二人して大きなため息をつく。まだこれからも大変なことが起こりそうだ。
 拭いきれない不安感が頭の中で渦巻くのを感じながら、僕はさっきまで今日の一連の犯人が立っていた場所をただ傍観することしかできなかった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ