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魔女に乾杯!
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第四十四話

                  第四十四話  裏山で
 五人の小さな魔女達がそれぞれの魔法をレベルアップさせている頃美奈子は学校の裏山で一人音楽の勉強を続けていた。
 彼女が得意とするのは歌にピアノ、そしてフルートであった。特にフルートは今までコンクール等で優勝しなかったことがない程であった。
 天才とさえ言われていた。だがそれだけでいつも優勝できるわけではない。そこには努力があった。彼女は毎日裏山でフルートの勉強をしていたのだ。
 一人裏山の頂上で笛を吹く。その後ろには何千年も生きている樫の木がある。彼女はいつもその木を後ろにして笛を吹いているのである。
 今日も笛を吹いていた。ランドセルを足下に置いて笛を吹く。覚えたての曲を何度も何度も練習する。そこに誰かがやって来た。
「今日もここで練習してるのね」
「ええ」
 それは双子の姉妹であった。華奈子が頂上にやって来たのだ。
「何かいつもここね」
「ええ」
 美奈子は姉妹にそう答えた。
「何かね、ここは凄く落ち着くのよ」
「この木のせいかな」
 華奈子はそれに応えて上を見上げた。
「この木?」
「樫の木よ。ほら、樫の木って魔力があるっていうじゃない」
「そうね」
 魔法のことは知らない筈だが美奈子はそれに頷いた。華奈子はそれを一瞬だけだが妙に思ったがほんの一瞬だけであった。すぐに忘れてしまった。
「だからじゃないかな。あたしもここにいると落ち着くし」
「ふうん」
「ねえ美奈子」
 華奈子は姉妹にあらためて言った。
「お願いがあるんだけれど」
「何かしら」
「今吹いてた曲あるよね」
「ええ」
「もう一回吹いてくれない?何か気になって」
「それでいいの?」
「いいのって?」
「他の曲も吹いていいのだけれど」
 美奈子はにこりと笑って華奈子にそう言った。
「どうかしら」
「他の曲もあるんだ」
「勉強しているのは一曲じゃないから。何曲も練習してるし」
「じゃあお願いできるかな」 
 華奈子は頼んだ。
「どの曲がいい?」
「全部」
「それじゃあ一曲ずつ順番でいくわね」
「うん、それでお願い」
「じゃあ」
 そして美奈子は笛を構えた。そして吹きはじめる。
「うわあ」
 その美しい音色を聴いて華奈子は思わず声をあげた。まるで音楽が二人を包み込む様に流麗に流れているのだ。
「まるで魔法みたい」
「うふふ」
 美奈子はそれを聞いて神秘的な笑みを浮かべていた。それはまるで魔女のそれのようであった。


第四十四話   完


               2005・9・17



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