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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十五話 横須賀へ
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りの手を打ったわ。」
陸奥が流れるように報告した。
「よし、準備はすべて整った。ご苦労だった。」
後は、と長門は皆を見まわした。
「舞鶴鎮守府と呉鎮守府の艦隊、そして扶桑、山城の到着を待つだけだ。」




同時刻、駿河湾沖――。
 舞鶴鎮守府と呉鎮守府の連合艦隊は海上を軽快に白波を蹴立てて走り続けていた。海上は穏やかな晴れ、夏の到来を思わせる大きな白い雲が広がっていた。
「ここまでくれば、あと一息よね。」
暁が誰ともなしに言った。
「いいえ、むしろここからが正念場です。」
霧島が異を唱えた。
「確かにここからは横須賀鎮守府の勢力圏内ですが、太平洋上に出没する深海棲艦は相模湾にまで進出することもあるといいます。制海権は確保できていません。」
太平洋に面した東京や横須賀は確かにヤマト海軍の中心でもあるが、同時に敵の攻撃に最もさらされやすい位置にもあった。このため駿河湾沖から徐々に沿岸は強化砲台や対空砲陣地が幾重にも供えられ、鉄で塗り固められたように灰色になっていた。
「それに横須賀や横浜は軍事工業地帯だから、敵の艦砲射撃や空爆の目標にされやすいんです。現にこれまで幾度か深海棲艦から発艦してきた敵艦載機の空襲にさらされています。」
と、赤城。
「それに私たちもね。」
ビスマルクが言った。当初決まったプランでは護衛艦隊は暁たち第6駆逐隊だけだったのだが、提督が急きょビスマルクとプリンツ・オイゲンを増員として派遣することとした。行も怖いが帰りも怖い、というのがその理由だったが、ビスマルクは内々にもう一つの理由も聞かされていた。
(紀伊・・・・近江・・・・。)
ビスマルクは同航する二人の新型艦娘をそっと見た。ヤマトの最新鋭の技術を結集させた紀伊型空母戦艦。戦艦並の火力と装甲、戦闘能力を持ちながら正規空母並の艦載機を運用でき、なおかつ高速で(瞬間的には駆逐艦の最大速度すら凌ぐ)長距離を移動できるまさに万能艦娘である。その威力についてはこれまで度々の海戦で実証されてきた。当然敵もこれを知り、自分たちの脅威となる新型艦娘を真っ先に撃沈しようとするだろう。

それが今二人もそろっているのだ。

ビスマルクは絶えず周囲を警戒し、敵影がないかどうか見張り続けてきた。
(もしもの時は・・・私が盾となって二人を護らなくてはならないわ。でも、それを二人が承知するかどうか・・・・。)
紀伊も近江も絶対に仲間を犠牲にして自分だけ助かろうとする気質の持ち主ではない。それを良く知っているだけに、そうならないことを祈りつつ、ビスマルクは警戒をつづけた。

 その一人、海上を走る紀伊はそっと自分の右を走る近江を見つめた。近江がいなかったら、出立前のあのことがなかったら、もっと違った心づもりでいたし、おそらく待ち受けているであろう衝撃を受け
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