暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
僕だけがいない家
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「この天気のなか外に行く、と?言っときますけど絶対十数秒で青い顔してカムバックするのがオチですよ」

この雪より真っ白な髪を持つ少女が何の脈絡もないことを唐突に叫ぶのはいつものことだとして、今日は抑え役(レン)がいない分止めるのに一苦労になる予感がする。

まさかそれすら計算の内ではあるまいな、と手足をばたばたさせるマイを見下ろしながら、カグラはドアを開けて入ってきたメイドNPCから二人分のマグカップを受け取った。

品のいいダージリン特有の香りに鼻をひくつかせながら、片方を振り回される拳の射程外にあるテーブルの端っこに置いた。

もう片方のカップをソーサーから取り上げ、香りの入った湯気を燻らせる。

「だいたい、いつもは大人しく本を読んでるじゃないですか。なんで今日に限って……」

言外に何でブレーキがいない今なんだ、ということだったのだが、そんな情報戦に気付いた様子もなく少女はうつ伏せでソファに寝っ転がったまま、よくぞ聞いてくれましたとばかりにキラキラした顔だけを上げた。

「中央のほうで美味しいアイスが売ってるんだって!しかも期間限定なんだよ期間限定!この響きからしてきっと味覚パラメータの起こした奇跡のような味がするかも!」

「事前ハードルが高すぎる!それ絶対食べたら首捻るパターンですよ!しかも雪の中でアイス!?ブルジョア思考が一周半回ってマイナス値になってますよ!」

この期待感。

どうせ情報屋が定期的に出し、ウチでも購読している新聞に挟まっていたチラシに宣伝でも入っていたのだろう。

あの手のものは情報をプレイヤー間で共有するのが主目的だが、新人プレイヤーが出店なりする場合に大手に呑み込まれないよう支援する一面も持っている。多少の誇大表現はやむを得ないが、この食いつき振りを見るからに相当デタラメなことを書いていたのかもしれない。いやまぁ、鵜呑みにするマイもマイだし、まだ少女の言うように本当に美味である可能性もあるのかもしれないが。

しかし何せ季節が季節、ものがアイスだ。

もう少し時期を考えてほしい、と思いながらカグラは軽くため息をついた。

「む、じゃあカグラは気にならないっていうの?」

「気になるか気にならないかで言えば気になりますが、わざわざそれ食べるために雪の中飛んでいくほどじゃないです」

「ちっちっちぃー。分かってないなー、雪の中でアイスを食べるっていうのがオツってヤツなんだよ!」

「……………」

やはりコタツでアイスと間違っていないだろうか。

しかし指摘したところでこの少女がそう簡単に自分の意見を覆すとも思えない。かといってこの天気の中、顔面に雪のパックを張り付けながら飛んでいく気分にはとてもならない。というか普通に嫌だ。

という訳で歯
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