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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第9話『──ごめんな』
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くなっていく体温にすら気が行かず、ただ腕の中の少女をひたすらに抱き締めた。
 ぎゅっと、ジークを抱く真っ白な手に込められた力も強まる。掻き抱くようにその手はジークの体をぎゅっと、しかし苦しくない程度に締め付け、少女の慟哭が耳に届く。そのつどまた罪悪感に苛まれ、再びボロボロと涙を零した。

 人間(おれたち)は、決して許されない事をした。

 確かに、魔族が人間に齎した悲劇は無数に存在するだろう。
 こんなちっぽけな悲しみとは比べ物にならない、膨大な涙が流されたのだろう。

 けれど、彼女は?

 彼女が、何か悪事を働いたのか?
 彼女が、人を殺したのか?
 彼女が、人間に不幸を齎したのか?

 断じて否だ。

 けれど、彼女は今根拠のない罪を押し付けられて、悲しみに暮れている。
 なんで、スィーラがこんな目に遭わなければならない。
 なんで、スィーラがこれほどまで悲しまねばならない。

 なんで、スィーラにこれほどの絶望が押し付けられねばならなかった。

 こんな結末は間違っている。

 彼女が。

 人間に──。



 −−彼女が人に何をした?

「──ごめんな。……ごめんな……ぁ、っ」




 今はただ、この腕の中で哭く少女を抱きしめていたい。
 それがせめてもの、罪滅ぼしになるのなら。

 それが、せめて少女の悲しみを和らげられるのなら。








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