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東方虚空伝
第三章   [ 花 鳥 風 月 ]
六十一話 百鬼夜荒 肆
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としたが、再び正体不明の圧力とも衝撃とも取れない何かに吹き飛ばされる。
 だが戦闘種族とも言える鬼である勇義は、現象の正体を考察するよりも早く、第三波に備え既に防御態勢に入っていた。
 分からない事象への思考より、迫るであろう事態への対処を優先する――――鬼らしく、そして堅実な行動である。

 しかし自体は勇義を翻弄するかの様に急変した。

 吹き飛ばされる衝撃に備えていた勇義が――――今度は逆に吸い寄せられるかのように引っ張られたのだ。
 あまりにも予想外の事態に流石の勇義も混乱し注意力と体勢を乱してしまう。

 勇義が何とか立て直そうとした、その時――――

 ナニかの鋭い煌めきが勇義の首を目掛け(くう)を斬って奔る。

「ッ!!嘗めるなァァァァァッ!」

 確実に彼女(勇義)を首と胴に別れさせた、と思われた一閃は、勇義が打ち上げる様に放った左拳によって弾かれ彼女(勇義)の髪をほんの少し散らすに(とど)まった。

 一閃を放った影――――虚空は勇義から距離を取り深々と溜息を付くと、

「……本ッ当に嫌になるね。全く…今ので死んでくれたら楽出来るのに」

 襲われた側にしてみれば身勝手過ぎる言葉を悪気も無さそうに口にする。 

 彼の左手には、何時の間にか持っていた刀のとは別の武器が握られていた。

 それは虚空の能力の一つである刃―――嫉妬(レヴィアタン)
 先端へと向け細くなっている形状を持つ、エストックと呼ばれる剣。
 その力は『引力』と『斥力』の操作であり、先程までの勇義を翻弄していたモノの正体である。


 虚空の言葉に勇義の瞳に宿る怒りの揺らめきは勢いを増すが、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()――――

「……ふざけた戯れ言をッ!()()()()()て無()()()()ッ!!」

 そう勇義の苛立ちの最大の原因は虚空の氣質なのだ。
 虚空は勇義との戦闘に入ってから殺氣を発していない……それどころか――――

「殺氣どころか、()()()()も…()()すら纏わないッ!!
 本当に嘗めてるのかいッ!此処は殺し合いの戦場なんだよッ!ふざけるのも大概にしなッ!!」

 勇義の言葉通り、虚空は一度たりともどれ一つも纏っておらず放っていない。
 

 氣勢を籠めれば覇氣を纏い、氣が滾れば烈氣となる。
 そして武器を扱えば剣氣が奔り、敵対する相手の“死”を望めば自然と殺氣が生まれる。
 そして激しく氣勢を上げれば、実力差が
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