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身体は男でも
5部分:第五章
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第五章

「そのこともね」
「そうか。それじゃあな」
「それでいいのね」
「そこまで覚悟を決めてるのならな」
 やはりだ。この同僚もこう答えた。
「俺も何も言わないさ」
「有り難う。感謝するわ」
「御礼なんていいさ」
 それはいいとだ。その同僚はこう彼女に答えた。
「ただな。言っておくぜ」
「ええ。その言葉は」
「怯むなよ」
 同僚もだ。真剣な顔でアッチャカラーンに告げる。彼女のその顔を見据えて。
「そしてな。当たって砕けてもな」
「それでもなのね」
「落ち込むな」
 こうも告げるのだった。
「絶対にな。例え何があってもな」
「ええ。けれどね」
「けれど?」
「受け入れてもらえたら」
 あえて楽天にだ。アッチャカラーンは言ってみせた。
「その時は素直に喜んでいいかしら」
「ああ、その時はな」
「嬉しい時は喜んだらいいのね」
「悲しい時は落ち込んだら駄目だけれどな」
 悲観するな、そういうことだった。
「わかったな。それじゃあな」
「ええ、私行くわ」
 そのだ。サワリットの前にだというのだ。
「そして笑顔になってみせるわ」
「よし、じゃあ頑張れよ」
「当たって砕けろだ」
 同僚達もこう声をかけてだ。アッチャカラーンの背中を押した。こうしてだった。
 アッチャカラーンは花束、紅の奇麗なそれ手にしてだ。そのうえでだ。
 サワリットの会社の前に自分の車を持って来てだ。そうしてだ。
 彼が出て来るのを待った。退社時間になるのをだ。するとだ。
 その彼が会社の入り口、ガラスの扉からコンクリートの階段を一段ずつ降りてだ。出て来たのである。その服は端整な紺色のスーツと赤いネクタイだ。
 その彼の姿を見てだ。アッチャカラーンの胸は躍った。そうしてだ。
 すぐにだ。車から出てだ。彼の前に出た。当然花束も忘れていない。
 そしてだ。胸の鼓動を必死に抑え勇気を振り絞ってだ。サワリットに対して言った。
「あの」
「あれっ、どうしてここに?」
「用があって来ました」
「用?僕に?」
「はい」
 そうだとだ。思い詰めた様な顔で答えたのだった。
「そうです」
「僕にっていうと」
「あのですね」
 その心を抑えながらの言葉だった。
 顔は俯きそうになる。だがその顔も何とかあげて言った。
「私と。よかったら」
「華束を持っているということは」
「はい、交際して下さい」
 ここでだ。手にしている花束を出した。
「私と。よかったら。ですが」
「ですが?」
「私、実はです」
 言おうと決意していただ。そのことを言ったのである。
「心は女ですけれど」
「心は?」
「はい、身体は男です」
 このことをだ。遂に自分から言ったのである。
「それでも。サワリットさんがよかったら
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