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忘れ形見の孫娘たち
15. 和之、みんなに煽られる。
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 僕が課長に提出した辞表は目の前で完膚なきまでビリッビリに破り捨てられ、僕は呆気に取られた。

「却下」
「いやいやいやなにしてくれちゃってるんすか課長」
「却下だ」
「いや、ホントすみません。実家に戻りたいんです」

 爺様の二回目の告別式が終わって数日後、僕は休暇の終了を前に会社に顔を出した。そしてその日のうちに辞表を提出した。

「お前、ここ辞めて再就職のアテはあるのか? もう次は決めたのか?」
「ないです。でも実家に戻ります」
「アテがないなら俺が許さん。却下だ」
「課長に俺の進退を決める権利なんてないでしょう」
「なぁ斎藤。じいさんが亡くなったのが悲しいのは分かるけど、それでここの仕事を辞めなきゃいかんぐらい打ちひしがれてるのか?」

 僕が実家に戻る決心をしたのは、爺様の死がきっかけではない。

――かずゆき!

「違います。実家に戻りたいんです」

 僕の気持ちは変わらない。僕は実家に戻る。課長は大好きな上司だけど、僕は実家に戻りたいんだ。これからはあの土地で暮らしていくんだ。

「いやだからさ。俺はお前が実家に戻るのは反対してないんだよ」
「んじゃ何が気に入らないんですか?」
「いや別にさ。ここを辞めなくても実家に戻る方法はあるだろ?」
「ムリでしょ。ここから僕の実家はかなり離れてる。実家から通うのは現実的じゃありません」

 頭にモジャモジャ線を浮かべながら課長は頭をボリボリとかいた。なんだ? 課長は割と迷ってる部下に対して『責任は俺がとるんだからチャレンジしてみろやボケナス』と背中をドンと押してくれるタイプの人なのに……なんで今回はこう、やたら僕の前に立ちふさがってくるんだ?

「……あのな斎藤?」
「はい?」
「お前、職業は何だ?」
「プログラマーですが……」
「だよなぁ」

 机の上の湯のみをつかみ、ずずず……と音を立ててお茶をすすったあと、課長はまっすぐ僕を見て再び口を開いた。

「お前の商売道具は何だ?」
「パソコンです」
「お前が作るものは?」
「プログラムです」
「……ここまで言ってもまだわからんか?」
「さっぱりです」

 課長、いい加減ハッキリ言いましょうよ。僕は頭の回転が早い方じゃないんすよ……。

「……お前、ノーパソでいつも仕事してるよな?」
「ですね」
「仕事に詰まった時はどうしてる?」
「スタバで店への迷惑を顧みずにコーディングしたり、図書館で企画書書いたり……」
「つまり?」
「つまり……?」

 ……僕の仕事は場所を選ばない?

「そうだよバカタレ!」
「ひやっ?!」
「お前はパソコンがひとつありゃどこでも仕事が出来るんだ! だったらここの社員のまま実家に帰りゃいいんだよ! 会社は貴重な社員を失
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