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とんでもない役立たず
第四章

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「絶対にさせなかったわ」
「そうらしいですね」
「それで私がいない間だけれど」
「はい、実は」
「食器洗いとは全部」
「私がしてました、あと何気に公平君に手伝わせました」
「そうしてたのね」
「だって店長さんは」
 見事な調理で揚げものを作っていく登龍をだ、黄蝉はちらりと見てそのうえでまた紅玉にかなり小さな声で囁いた。
「調理は天才ですけれど」
「そう、調理はね」
「あんな美味しい揚げもの作る人いないです」
「調理はね」
「けれど、ですからね」
「そう、食器洗いとかはなのよ」
「酷いですよね」
「家事もね」
 そちらもというのだ。
「全然駄目なのよ、やれば」
「余計にですね」
「普通のお部屋をお掃除してもね」
 それがというのである。
「もう余計に散らかるし音も五月蝿いし」
「だからですね」
「させないし」
 それにというのだ。
「風邪の時もね」
「いいって言われたんですね」
「そうしたの」
 実際にというのだ。
「勿論洗濯もね」
「お料理もですね」
「だってお料理は天才でも」
 それでもというのだ。
「あの人のお料理は散らかるから」
「だからですね」
「そう、させなかったのよ」
「お店でも」
「そうでしょ、凄いでしょ」
「あんなにお料理して散らかる人いないですよ」
「うちの旦那は片付ける才能ないの」
 それも全く、というのだ。
「だから何もさせなかったの」
「そういうことですね」
「黄蝉ちゃんはわかるわね」
「うちの親家事しっかりしてまして」
 黄蝉はこう紅玉に話した。
「私にも整理整頓には厳しくて」
「黄蝉ちゃん食器洗いとか上手だしね」
「はい、ですから」
 このこともあってというのだ。
「私もわかります」
「そう、うちの旦那はお料理以外はお荷物なの」
「それで奥さんはお店の雑用担当なんですね」
「そうよ、役に立たないから」
「猫の手も借りたい時も」
「そういう時も猫の手は邪魔になるでしょ」
「はい」
 黄蝉はまたしてもはっきりと答えた。
「最高に」
「うちの旦那は猫の手よ」
「お料理以外は」
「だからどんな状況でも家事はしてもらわないの」
「それでご主人はそのことは」
「気付かないから、だから」
 それ故にというのだ。
「言わないでね」
「気付かないままですね」
「それで済むからそういうことでね」 
 こう言ってだ、紅玉は食器を洗い店の雑用をするのだった。調理をするそのそばから汚して散らかしていく夫の傍で。


とんでもない役立たず   完


                         2016・3・18
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