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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第6話『例え恐れられようとも』
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うとする友人の背中を押す事の、何がおかしいというのか。
 そうと決まれば、行動は早い。

「−−『ブレシア』!」

 魔力を介した、加護の魔法。メイリアに回復魔法は使えないが、補助魔法ならば辛うじて使えない事もない。スィーラの体に力が満ち、幸運を授ける極光が彼女を照らす。驚いて振り返るスィーラに、同じくメイリアが決意を胸に笑みを浮かべる。
 きっと、ジークも遅れて来るだろう。彼ならば、きっとこの状況を覆す。それまで街を──否、人を守り切る。それが、二人に課せられた難題。
 辛うじて、まだ戦線は崩れていない。ならばまだ巻き返せる。押し返せる。たとえ制御しきれない魔法でも、出来る事はある筈だ。

 街は巨大であり、故に彼女達が背負うのは数万の人々の命。

対魔傭兵(かれら)』なら、決して引かない。


 一歩を踏み出す。

 勇気を奮わせる。

 前だけを見る。

 杖を握りしめ、魔力を練り、今こそ目の前に広がる戦場に躍り出る−−!







 ◇ ◇ ◇





 
「……っ、『フィリア』ッ!」

 最下級火炎魔法フィリア。本来は極小の炎弾を放ち、敵単体を屠る魔法の筈が、その火球は明らかに直径2mはある。
 明らかに過多な魔力を込められた"ソレ"は荒れ狂う焔を散らし、味方の騎士の頭上を越えて魔族達の中心に突き刺さる。轟音が大気を揺らし、暴風は敵味方問わずその体勢を崩す。メイリアの『体質』が炎を拡大し、魔物達を喰らう死神となる。
 魔族達は一部大火に呑まれ、数匹が焼け死んだ。が、当然次から次へと魔族達は襲い来る。
 その勢いは、止めようがない。

「くそっ、くそッ!撤退!撤退しろっ!魔族を抜かせるなッ!!救援が来るまで持ち堪えろっ!」

「畜生っ!なんでだよ!なんでこんな辺境の街に軍勢クラスが……っ!」

「あ"ぁ"ぁあぁぁぁっ!腕が……っ、腕がぁ……ぁ"ぁ……ッ!」

「もう無理だ……殺される……っ、俺ら全員食い殺される……っ!」

 隊長格の大柄な男が指示を出すも、半狂乱に陥った兵士達にその指示を聞く余裕はない。慌てれば慌てるほど騎士達は狩られ、新たな波乱を生む。
 戦場には金属音が響き渡る。剣と剣がぶつかり合い、血と悲鳴が撒き散らされる。やがて魔族の軍勢の奥に魔力が集い、巨大な魔法陣が形成される。数多の術者の手によって構築されたソレは、構造を見るまでもなく大規模全体殲滅魔法。
 魔法陣が光り輝き、轟く雷鳴音と共にその閃光が解き放たれた。

 それと同時、背後から白銀の少女が飛び出す。

 大気を泳ぐ紫電の束は魔神の鉄槌となり街の中心へと向かうが、弾丸の如き速度で撃ち放たれたその影が雷電に直撃する。

「……ぅ……ぁ"ぁ"……ッ!」
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