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満願成呪の奇夜
第14夜 狡知
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めに上体を動かしたのと『鎧の呪獣』が突っ込んだタイミングはほぼ同時。
 ジリッ、と擦る音が聞こえたが、ドレッドは側転で辛うじて躱したらしい。ただ、完全には回避できなかったのか、掠った足が大きく曲がって地面に転倒しそうになる。ギルティーネの反応速度でも躱しきれずに受け止めることになった突進だ。粗方の方向が分かっただけでは容易に回避できない。
 ここで転倒すればその隙を狙われると考えたガルドが、慌てて彼が地面に倒れる前に助け起こす。

「ドレッド、無事か!!」
「足は大事ない!私より敵を警戒しろッ!!」

 感謝をする余裕もない緊迫した声に、ガルドもドレッドが立ち直るのを確認するや否や、縄を取り出して――それをギルティーネに投げ渡した。ギルティーネは表情一つ変えずにその縄を『疑似憑依』で白熱するサーベルの峰で受けとめ、曲芸のように剣先を回して火のついた縄を宙に放り上げ、サーベルの納刀と同時に掴む。
 
 一部だけに火が燃え移ったそれは、ガルドが特殊な加工を施した縄――『灯縄(とうじょう)』とでも呼ぼう――であり、これをギルティーネに渡すことで次の作戦に移ることが出来る。

「よし、予定通り俺は一時方向、ドレッドは11時方向だ!準備はいいな!?」
「心得ている!!あてずっぽうで私たちに当てるなよ!!」
「冗談!そっちこそうっかり鎧に命中させて跳弾を喰らうんじゃないぞ!!」

 叫ぶと同時にトレックは『鎧の呪獣』が走り去った方角の右舷に、ドレッドは左舷に『炎の矢』を連続発砲する。数発の呪炎を纏った魔弾が暗黒を貫き、マズルフラッシュと弾丸の灯りが暗闇に潜む『鎧の呪獣』の場所を炙り出す。

 位置が悟られたことに気付いた『鎧の呪獣』の判断は予想以上に早かった。再び闇に隠れるために真正面から突進を仕掛けてきたのだ。こちらがあの突進を止める術を持たないことを理解しているのだろう。むしろ、その程度の知能もなかったのなら呪獣はとっくに大陸の民の天敵でなどなくなっている。

 しかし、突進してきたのは好都合だ。鎧と言うアドバンテージを最大に活かした突進によるヒット&アウェイ。避けにくく厄介ではあるが、今回はどこから突進してくるかが丸わかりだ。作戦を次の段階へ移すため、トレックは灯縄を握って低く構える自らのパートナーに号令を送る。

「ギルティーネさん、頼んだ!!」
「………………!!」

 その瞬間、ギルティーネが肉食獣のように深い姿勢から弾かれるように疾走した。手に握る縄が残像のように虚空に尾を引く。そしてその駿足の向かう先には――先ほど弾き飛ばされた『鎧の呪獣』恐れを持たない疾風の如く真正面から近付くギルティーネと『鎧の呪獣』の相対速度は加速度的に早まり、そして――。

 まるで先ほどの再現の様に、再びギルティーネの身体が宙
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