6部分:第六章
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第六章
だからだ。香菜も視線を上にやって考える顔になり述べたのである。
「あれが思い浮かんだけれど」
「そう、そのね」
「白鳥なのね」
「それと他にもモチーフにしたものがあるんだ」
「そのデザートに?」
「そうだよ、それじゃあそのデザートをね」
持って来ると言ってだ。そのうえでだった。
淳司はそのデザートを持って来た。それはというと。
白いアイスクリームのベッドの上にだ。白い桃がある。そして砂糖で作られた白い翼が二つ添えられている。その白く奇麗なデザートを香菜に見せてだ。淳司は彼女に話した。
「ピーチ=メルバだよ」
「ピーチ=メルバ。このデザートの名前なの」
「昔オーストラリアの歌手でメリ=メルバっていう人がいてね」
淳司はこのことから香菜に説明する。
「ワーグナーの役を得意にしていたんだ」
「そしてその中でもなの」
「そう、ローエングリンのエルザが得意でね」
「その人からできたお菓子なのね」
「そうなんだ。あるシェフが彼女のエルザに感銘を受けて作ったお菓子なんだ」
そうした由来をだ。香菜に話すのだった。
「これがそれなんだ」
「ローエングリンのお菓子なの」
「じゃあこれまでもたっぷり食べたけれど」
「ええ、最後にね」
「食べよう。これもね」
こうしてだった。彼等はだ。
そのデザートも食べようとする。しかしだ。
その前にだ。淳司は微笑んでこう言って来たのだった。
「ただ。食べる前にね」
「その前にって?」
「ちょっといいかな」
こうだ。香菜に言ってきたのである。
「ちょっと時間をくれるかな」
「時間?」
「そう、時間ね」
それを欲しいというのだった。
「今からだけれど」
「今からって」
「うん、少しの時間だから」
こう前置きしてだ。香菜に言うのである。そしてだ。香菜もだ。
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