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忘れ形見の孫娘たち
3.爺様のスイカ
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「軽巡洋艦、大淀と申します……ひこざえもん提督には……いつもお世話になっていました……」

 鈴谷に連れられてやってきた大淀さんはスイカを大事そうに抱え、元気のない表情でうつむきがちに、そう挨拶をした。

「……鈴谷」
「ん?」
「鈴谷たちはさ。艦これのコスプレしてるの?」
「違うよー。これが鈴谷たちの正装だよ?」
「それが正装なのか……」

 一体どんなファンタジーなんだ。大淀さんの服装なんかミニスカートのきわどいところにスリット入ってるぞ? こんなきわどい正装があるのか世の中に。つーかゲームの中の格好そのまんまじゃないか。これが正装だなんて聞いたことない。スリット! スリットなんとかしろッ!

「かずゆきのヘンタイっ」
「なんでだよっ」
「あの……すみません。ひこざえもん提督にご挨拶させていただいてよろしいでしょうか……?」
「あ、はい。それじゃご案内します」

 まぁあれだ。こいつらがコスプレ電波集団だとしても、爺様の友達で別れの挨拶に来たというのは変わらない。

 大淀さんを奥の和室に案内する。大淀さんは和室に入って爺様の遺影を見るなり……

「そんな……本当に……ひこざえもん提督……本当にお亡くなりになられたんですか……!!」

 と言いながら両手で口を抑え、その場で泣き崩れていた。さめざめと泣く彼女を見守った僕と鈴谷は、彼女を爺様と二人にさせてあげようということで彼女を和室に残し、今は居間で二人で大淀さんが持ってきたスイカをいただいている。

「大淀さんは任務娘って役職でね。ずっと提督の補佐をしてた人だよ。しゃくっ」
「ほーん……そら付き合いも濃そうだなぁ。しゃくっ」
「初期艦の五月雨ちゃんと一緒に、提督が着任したときからずっと提督を支えてた人だからね。今回も、自分が最初に提督の死を受け入れなきゃ……って使命感があったみたい。しゃくっ」
「見かけ通り真面目な人だ。コスプレだけど。しゃくっ」
「マジでコスプレじゃないから。あ、あと扇風機の首、鈴谷の方にも回して」

 鈴谷から風を催促され、バチバチと首を回して鈴谷にも風を送ってあげる僕。今日はちょっと蒸し暑いからね。確かに扇風機の風は欲しい。

「はー……すずしー……」
「なんつーか……めちゃくちゃくつろいでるね」
「へ? だって提督と和之の家でしょ? 別に良くない?」
「いや別にいいけど。……麦茶ほしいな……」
「あ、鈴谷も」
「自分で入れなさい」
「ぇえー! ついでにいれてくれてもいいじゃん! 鈴谷まだこの家のどこに何があるかわかんないよー!!」

 考えてみれば確かにそうだ。なんつーかこのくつろぎっぷりを目の当たりにして、付き合いの長い腐れ縁の仲みたいな感覚を抱いてしまっていた……そんな自分にほんの少しの憤りを覚
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