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罪作りなボイス
9部分:第九章
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第九章

「それ本当!?」
「あいつの何処がいいの!?」
「確かに悪い奴じゃないけれど」
「背はあまり高くないし成績も中位で」
「結構おっちょこちょいだし」
「抜けてるところも多いし」
「それはですね」
 笑顔でだ。香菜は周りに話していく。
「性格もいいですし」
「まあなあ。意地悪い奴じゃないしな」
「むしろ親切で思いやりがあるよな」
「とりあえず性格はいいよな」
「ずぼらなところがあるけれどな」
 欠点はあるがそれでもだというのだ。しかしだ。
 彼等はここでだ。香菜のこの言葉に問うた。
「けれど性格『も』!?」
「性格が第一じゃないんだ」
「じゃああいつを好きな一番の理由は?」
「それって何なの?」
「私を好きでいてくれるからです」
 これがだ。第一の理由だというのだ。
「好きでいてくれてるからです」
「つまり。自分が相手を好きなら?」
「相手も自分を好きになる」
「そういうことになるよな」
「これってな」
「そうですね。泉谷君が私を好きですから」
 にこりと。まるで天使の様な笑みでだ。香菜は話す。
「私も泉谷君が好きになりました」
「ってことはだ」
「あいつが好きでこの娘も好きなら」
「相思相愛?」
「じゃあもう阻むものはないから」
 誰もだ。紘のそのあからさまな熱さには敵わなかったのだ。
「カップルの誕生かあ」
「そうなるのね」
 こうした話をだ。この状況では外野になる軟式野球部の面々もだ。もう一方の当事者である紘に対してだ。こう言ったのである。
「おい、聞いたか」
「あの娘も御前のことが好きだってよ」
「そう言ってるぜ」
「はっきりと言ってるぜ」
「うん、聞いてるよ」
 紘自身もだ。こう彼等に応える。
 まるで夢を見ている様な顔でだ。彼は応えた。
 そしてだ。仲間達に話した。
「これって夢じゃないよね」
「ああ、夢じゃないぜ現実だよ」
「実際になっていることだからな」
「よかったな」
「試合に勝っただけじゃなかったぞ」
「これって最高の結末だよね」
 紘は周りに言われてもだ。まだ信じられないといった顔だった。
 そしてその顔でだ。香菜を見てだ。
 彼女のところに向かう。彼女もだ。 
 そうして二人で向かい合ってだ。お互いにだった。
 二人共俯きだ。顔を赤らめさせている。あまりにも恥ずかしくて言葉は中々出ない。だがお互いに何とか振り絞ってだった。
「ええと、随分遠回りっていうか足踏みしてたけれど」
「そうですね。私も」
「けれど。今なら」
「そうですね。こうして」
 それぞれだ。言う言葉は。
「これから。宜しくね」
「私でよかったら」
 言葉と共にだ。今度はお互いに両手を出し合い。
 手を握り合う。そして紘はその中でだ。
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