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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第179話 徐元直 後編
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許しありがとうございます」

 朱里は正宗に謝罪と礼を述べるとそそくさと移動し泉に譲られた場所に立った。

「単福、聞いての通りだが、私はお前を罰するつもりで呼んだ訳ではない。ただ、お前に会いたかっただけだ。だから、そう畏まるな」
「はっ!」

 正宗は徐庶の反応に苦笑した。徐庶の反応は仕方ない。朝廷の重臣、宗室の出自、そして王爵の地位を持つ人物である。徐庶は単家、士大夫どころから底辺の出自である。その彼女が雲上人である正宗に直々に声をかけられ厚遇されれば畏まってしまうのは当然のことだろう。

「車騎将軍、名門のご出自であられる袁太守の相談役。身に余る光栄でございますが、私のような卑賤の身には荷が重いことと存じます」

 徐庶は正宗に対して平伏すると平身抵頭で緊張した声でゆっくりと言いやんわりと辞退したいと口にした。徐庶は豫州の生まれである。美羽の一門である汝南袁氏は豫州で一二を争う権勢の家柄である。そして四世三公と世間で謳われる程の名家である。それに加え美羽の母も血筋がいい。徐庶は引け目を感じているだろうが、それ以上に自分が相談役などになれば、美羽の周囲の者達から嫉み恨みを買いどんな目に遭うか分からないと考えているように見えた。

「そう性急に結論を出す必要もない」

 正宗は徐庶の言葉を聞き終わると、一旦返事を留保した。彼は徐庶の返事をある程度予想していたのだろう。あまり慌てた様子はなかった。
 徐庶は正宗の反応に困っていた。彼女の声音から、正宗の頼みを断ることで彼の勘気に触れる可能性があると思っていたことは理解できる。そして、徐庶を水鏡学院の運営責任者の後任として押した師匠である鏡翠の顔を潰すことにも繋がると。だが、この場で徐庶が口にしたということは、鏡翠の許しは事前に得ているのだろう。事実、鏡翠は徐庶の言葉に怒りを示す様子はない。

「車騎将軍、私には」
「単福、妾は出自を問わない。これから兄様が創設する学院は身分も貧富も問わない。妾は兄様のお考えには賛成している。妾の配下にも市井の出の者達の方が多い。そなたが気負うことはない」

 美羽は徐庶の言葉に割り込み、笑顔で徐庶に語りだした。美羽の思想は正宗による薫陶の影響が大きい。美羽は幼少期から市井の者達と日頃から密に付き合ってきた。結果、彼女は市井の者達は士大夫層や権門の家柄の出身層などの支配層側の者達と同じ人間だと実感したのだ。その思想は美羽の南陽郡における民政重視の施政にも現れていた。

「袁太守のご名声は豫州にまで響き亘っております。しかし」
「ほう。どのような内容だ」

 美羽は徐庶の言葉を遮り、徐庶に質問した。徐庶は美羽の不躾な割り込みに不満を示すことなく口を開いた。

「民を慈しみ仁政を施し、貧しき者達には日々の糧と住まいと仕事を与え
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