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罪作りなボイス
2部分:第二章

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第二章

「あれっ、デートかい?」
「何かいつもよりお洒落じゃないか?」
「服だってアイロンかけて」
「糊まで効かしてるか?」
「たまたまだよ」
 自分の席にだ。もう着席している彼は必死の顔で言い繕う。
「親父が制服にアイロンかけろって五月蝿くてさ」
「親父さんがそんなこと言うか?」
「普通言わないだろ」
「そうだよな」
 誰もがだ。真相はわかっていた。 
 しかしだ。今はだ。あえてこう彼に言うのだった。
「まあそれでもな」
「身だしなみはきちんとする方がいいよな」
「髪だってな」
「いつも以上に整えてるし」
「あっ、これは」
 またしてもだ。必死に理由付けして話す紘だった。
「あれなんだ。お袋が朝はちゃんとシャンプーしてセットしろって」
「朝シャン?ちょっと古くないか?」
「だよなあ」
 このこともだ。彼等は察して話す。
「って部活の朝の練習は?」
「そっちは?」
「もう終わったよ」
 そのだ。軟式野球部の朝の部活はもう終わったというのだ。
 そのうえでだ。彼はまた話すのだった。
「それでまあ」
「速攻で着替えてここにいるってのか」
「クラスに」
「もう少しかな」
 教室の時計をちらりと見てだ。彼は言った。
「あと少しで」
「そうそう、放送入るな」
「もう香菜ちゃん放送室にスタンバイしてるよな」
「ああ、もうすぐだよな」
「放送入るぜ」
「いよいよだぜ」
 彼等もにこにことしてだ。紘を見ながら話す。そうしてだった。
 壁にかけられている丸い時計の時間が八時になった時に。その声が聞こえてきたのだった。
「おはようございます」
「ほい来た」
「放送開始だ」
「はじまったぜ」
 クラスメイト達がその声を聞いて言う。確かにだ。
 声は清らかで可愛らしい。高く澄んでいる。その声を聞いてだ。
 自然とだ。紘の顔がだ。
 にこにことしたものになる。まるで魚が水の中に入った様に.。
 そしてだ。彼女の声を聞いているうちにだ。
 その顔がさらに笑顔になりだ。それで言うのだった。
「やっぱりなあ」
「にやけてきたな」
「もう幸せの絶頂にあるみたいなな」
「そんな感じだよな」
 こう言うのである。そしてだ。
 放送の間中ずっとにこにこしている紘はだ。放送が終わるとだ。こんなことを言うのだった。
「じゃあ今日はな」
「今日は?」
「今日はっていうと?」
「最高のスタートを切れたな」
 そうだというのだ。
「もうな。最高のスタートだよな」
「へえ、そりゃ何でだ?」
「何で最高のスタートなんだ?」
「それは」
「いや、何でもないさ」
 とりあえずだ。隠す努力をする彼だった。

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