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第二十八話 敵の懐に飛び込みます。
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帝国歴484年5月12日――。


自由惑星同盟領内 エル・ファシル星域付近宙域――。
第三哨戒艦隊――

 第三哨戒艦隊はエル・ファシル星域一隊を哨戒担当する3,000隻程度の巡航艦を中心とした艦艇で構成されている。戦闘任務ならともかく、普段の哨戒任務であれば、航続距離の適した巡航艦の方がよほど経済的なのだ。搭乗する人員も戦艦よりずっと少ない。
 その哨戒艦隊を指揮するのは、自由惑星同盟でもまだ珍しい女性将官だった。原作では中将以上の艦隊司令官がすべて男性であったように、自由惑星同盟ではまだまだ女性将官への登用の道は狭かったのであった。
 だが、シャロンが改革の骨子として、女性将官登用の道を切り開いたので、帝国と同様女性将官の登用が積極的に行われていたのである。
 ティファニー・アーセルノもその一人だった。21歳という若さで少将であるが、さすがに女性将官の登用枠を広げるためとはいえ、それだけの理由ではあまりにも若すぎる。これは彼女が次期国防委員長有力者のヨブ・トリューニヒトら政界の有力者とパイプがあるから、そして彼女が先々代宇宙艦隊司令長官の孫娘であること、かつ軍の様々な要職者とつながりがあるからこそ、できたことだった。


 「この世で最も利用できるものはコネクションであり、それを利用することを恥とも思わない人間こそが成功するのだ」というのは、ある自由惑星同盟において成功した企業家の言葉である。

 また、彼女自身の資質も一役買っていた。当初は若い女性だからと侮りを受けていたが、彼女自身の他を寄せ付けない優れた格闘技術に加え、やや感情的ながらも優れた洞察力と指揮ぶりは他の哨戒艦隊幹部には見いだせないものだったから。

 ティファニー・アーセルノは鼻の頭付近にそばかすの散った、だが、整った顔立ちをしている。よく手入れされたダークシーグリーンの髪をポニーテールにしていた。顔立ちにはちょっと険があるし、感情が激してくると刺すような言葉で相手を責めるが、それでも美人だったし、普段の彼女は人付き合いもよく、部下からの相談をよく親身になって聞いていたから哨戒艦隊内部では人気があった。

 その彼女が護衛艦936隻と共に、哨戒任務に就くべくエル・ファシル本星を出立したのは帝国歴484年5月10日の事であった。3000隻の艦艇とは言っても、その全軍はエル・ファシル星域に散っており、直ちに招集できる艦艇はその程度なのであった。

「帝国軍の艦艇の一部が同盟領内に潜入したとの情報が情報部からもたらされたわ。総数は10席程度。けれど、潜入してきたということは他に何か重要な目的があるのだと情報部は睨んでいるわ。全軍、総力を挙げてこれを捜索するように!上手く帝国軍艦艇を拿捕でき、その目的を聞き出せれば、全員1階級昇進は間違いなしよ!」


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