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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九十四話  財務官僚の悩み
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は帝国の安全保障、財政問題、経済問題そのものなのだ。財務官僚が同盟からの提案に多少眉を顰めても声を上げて反対しないのはそのためだ。

「卿は如何思うのだ、司令長官」
「受け入れるべきだと思います」
「……」
「ディナールの通貨価値が安定しなければ通貨の統一は出来ません。この点についてボルテック氏から懸念が出ています。そして通貨の統一は国家の統合に必要不可欠です。早急に同盟の経済を、ディナールを安定させなければなりません。そのためには大規模な景気高揚策が必要です」
なるほど、それが有ったか。リヒテンラーデ侯が大きく頷いた。

「分かった。同盟からの要請を受けよう」
元帥が頭を下げたので慌てて私も頭を下げた。
「それにしても統一とは面倒な物よ、向こうの事まで考えねばならんとは。……負担が倍になるの」
全くの同感だ。軍事費の増大、遺族年金の増加、税収の減少からようやく解放されたと思ったのに……。



宇宙統一暦 元年 2月 17日    ハイネセン  ヤン・ウェンリー



「軍を辞めたそうだね。退職願が受理されたとキャゼルヌに聞いたよ」
「今の同盟軍は私を必要とはしていません。今必要とされているのはキャゼルヌ先輩の様な人でしょう」
私が答えるとシトレ前本部長が微かに頷いた。どうやら心配して訪ねて来てくれたらしい。或いはキャゼルヌ先輩に頼まれたのか。

「これからどうするのかね?」
「三月までにこの官舎から出て行くようにと言われています」
「その後は?」
「未だはっきりと決めたわけではありませんがフェザーンにでも行ってみようかと……」
「フェザーンか」
「はい」
シトレ前本部長がまた頷いた。

口には出さないがユリアンはフェザーンに行きたがっている。ユリアンが如何いう人間になるのかは分からない。平凡な人間で終わるのか、或いは国家に大きな影響を与える人間になるのか。だが可能性を持たせるにはハイネセンに居るよりもフェザーンに行った方が良いだろう。これからの宇宙は間違いなくフェザーンを中心に動く。その中でユリアンが何を見、何を考えるのか……。

「奇遇だな。実は私もフェザーンに行く事になった」
「……と言いますと」
「同盟の大使としてフェザーンに赴任する」
「それは……」
「つい先日までは誰も大使に成りたがらなかったのだがね」
シトレ前本部長が笑いながら話し始めた。

「最近レベロ議長の元に自らを大使にと売り込みに来る人間が多くなった。帝国が同盟の提示した国債の額を削る事無く承認した。その事で帝国を与し易しとでも思ったらしい。当然だが帝国には帝国の考えが有る。国債の額を承認したのもその考えによるものだ。帝国は決して甘い相手ではない。ヤン、君なら分かるな?」
「はい」
分かっている。好意
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