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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四話 カストロプの動乱
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ディンにいる友人たちが動いてくれる。

いずれあいつらには必ずこの礼はする。いや、私がするまでも無く帝国は反乱軍に滅ぼされ、奴らも殺されるかも知れない。それでも良い、誰も私には何も出来ないのだ。

「閣下!」
「どうした」
「敵が動き出しました」

オペレータの緊張した声に慌ててスクリーンを見る。スクリーン上には白い大きな何かが衛星に向けて直進しているのが見えた。徐々にスピードが増していく。あれは何だ?

「どれに攻撃を仕掛けてきたのだ」
「それが、十二個の衛星全てに対してあれと同じものが向かっています」
「十二個?」

何を考えている? いや、あれは何だ?
「あれは何だ? 誰か答えよ」
「……」
「誰も判らんのか、この役立たずどもが!」

スクリーンが作動し、あの物体を拡大投影した。大きい、戦艦より大きい。何だあれは、氷のように見えるが、そうなのか?
「あ、あれは、氷か?」
「……」

私の疑問にも誰も答えない。顔を見合わせるだけだ。役立たずどもが! 何のためにお前たちは居るのだ? しばらくしてオペレータが答えた。
「衛星からあの物体の成分が送られてきました。あれは氷です。間も無く衛星が攻撃を始めます」

やはり氷か。馬鹿な、氷など何の役に立つ、ぶつかる前に破壊されるのが落ちだ。ヴァレンシュタインめ、虚仮脅しをしおって。攻撃が始まった。レーザー砲が氷を襲う。効かない! 氷からは水蒸気が上がるだけで何の効果も無い……。

衛星は次々とレーザーを発射するが氷は直進を止める事は無い。馬鹿な、このままでは衝突する。あれがぶつかったら衛星は……。

「氷が、間も無く衛星に衝突します」
オペレータの怯えたような声が部屋に響く。どうすれば良い。あれがぶつかったら衛星は……。



帝国暦 487年8月 3日  カストロプ星系 シュムーデ艦隊旗艦 ロルバッハ  エグモント・シュムーデ


「アルテミスの首飾り、全滅しました」
アーリング大尉が何処か放心したような声を出した。気持ちは分かる、反乱軍の誇るアルテミスの首飾りが一瞬にして全滅したのだ。味方でさえ呆然としている。敵の混乱はどれほどのものか。


「マクシミリアン・フォン・カストロプとの間に通信を開け」
私の命令に艦橋の人間たちがわれに返ったように動き出す。やがてスクリーンにマクシミリアンが映った。眼が血走っている。恐怖で動転しているのか……。

「マクシミリアン・フォン・カストロプ。私はエグモント・シュムーデ中将だ。降伏したまえ、命は助ける」
「嘘だ! 帝国が反逆者を許す事などありえん。私を騙すつもりか?」

「宇宙艦隊司令長官ヴァレンシュタイン上級大将の言葉だ。降伏すれば、命は助ける」
「……」

「卿が降伏しな
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