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媚薬
7部分:第七章
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第七章

「いやあ、松本教授からなんて」
「私もだ。想定の範囲外だった」
 まさにそうだったとだ。津波も言う。
「まことにな。こんなことははじめてだ」
「科学に医学、薬学、工学の権威の博士でもですね」
「天才の私が何故」
「ああ、その言葉は核戦争後の世界の自称天才の言葉ですから」
 だから駄目だと。比佐重は突っ込みを入れるのを忘れない。
 その突っ込みからだ。また言う彼だった。
「とにかくですよ。博士も予想できなかったんですね」
「私の何処がよかったのか」
 津波は言いながら首を傾げさせる。己の机に座ったままパソコンにも手をやらない。そのうえで机の上に座っている比佐重に話すのです。
 その前足を立たせた猫独特の座りでいる彼はだ。少し考えた。
 それからだ。こう津波に言ってきた。
「ええとですね」
「何だ」
「媚薬ですけれど」
「その媚薬だな」
「博士がそうだったんですよ」
「私がか」
「はい、博士御自身がです」
 他ならぬだ。彼女がそうだったというのだ。
「媚薬だったんですよ」
「馬鹿を言え」
 津波は比佐重の今の言葉をすぐに否定した。
 そのうえでだ。こう彼に言い返した。
「媚薬は薬だ。私は薬ではない」
「違いますよ。魅力ですよ」
「魅力か」
「そう、魅力です」
 その魅力がだ。どうかというのだ。
「博士に魅力があったんですよ」
「私に魅力がある筈がない」
 容姿のことについてはだ。こう返す彼女だった。全否定だった。
 それでだ。また言うのだった。
「背も低いし胸もない。顔も童顔だ」
「それがいいんじゃないですか?」
「いいのか。それが」
「はい。まあ松本教授はあれで実はそうした好みだったんですよ」
 比佐重はそれがどういう言葉で表現されるのかはあえて言わなかった。
 しかしだ。彼はまた言うのだった。
「それでなんですよ」
「私のこの容姿がか」
「好みだったんですよ。博士の優秀さも含めて」
「そうか。そうだったのか」
「そうなんですよ。つまり媚薬はですね」
 その媚薬がだ。どうかというと。
「誰にでもある。魅力だったんですよ」
「私の魅力か」
「はい、そうです」
「魅力は誰にでもあるのか」
 津波は比佐重の話を聞いてそれでまた言った。
「そういうものなのだな」
「そういうことです。まあ何はともあれ」
「ハッピーエンドか」
「そうなります。実際に」
 こうしたことを話してだった。比佐重はあらためてだ。津波に話した。
「おめでとうございます。これからもですね」
「幸せにだな」
「なって下さいね」
「わかった」
 津波は今の比佐重の言葉には静かに頷くことがdけいた。そしてだ。
 造った媚薬はだ。こっそりと捨てた。他の、それも最高の媚薬
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