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ダンディズム
5部分:第五章
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第五章

「塹壕のことだったね、英語で」
「そうでしょ?それでなのよ」
「成程ねえ。そうだったんだ」
「それでフロックコートだけれど」
 あらためてだ。英美里はそのフロックコートの話をしてきた。
「任せて。ちゃんと孝宏君に合うのを見つけるから」
「お願いしていいかな」
「そうさせて」
 にこりと笑ってだ。夫に応えてだった。彼女はそのフロックコートを出してきたのだった。
 こうしていってだ。彼はスーツも靴もコートまでもだ。全て英美里に選んでもらった。そしてその服を着て会社に行くとだ。同僚達にこう言われたのだった。
「おいおい、最近凄いな」
「何か別人みたいにいい服着てるな」
「部長からのプレゼントかい?」
「かみさんが選んでくれてるんだよ」
 孝宏は正直にだ。同僚達にこう話す。尚この同僚達も何だかんだで会社の上司達の縁者になっている。どうもそうした会社らしい。
「それでなんだ」
「ああ、部長の娘さんの」
「その人が選んでくれてるんだ」
「そうだよ。それでなんだ」 
 孝宏は笑顔で彼等に話す。そしてだ。
 明るい笑顔でだ。こうも言うのだった。
「いや、何かこういういい服を着てると」
「違うかい?何処かが」
「そうだっていうのかい?」
「うん、違うよ」
 実際にそうだとだ。彼は言うのだった。
「仕事もやる気が出るよ」
「いい服を着たらかい」
「それで違ってくるんだ」
「しかもそれを選んでくれたかみさんの為にもって思うと」
 そうしたところからもだというのだ。そう考えると。
「張り切れるよね」
「じゃああれかい?課長や義理の兄さんみたいにかい」
「そうなるんだね」
「そこまでは考えてないけれど」
 出世はだ。実は今は頭の中に入れていなかった。
「けれどそれでもね」
「張り切れるってか」
「仕事についても」
「生活自体にね。やるよ」
 こうしてだ。彼は仕事も尚更頑張る様になった。そしてだ。
 彼はその服に相応しい仕事振りも見せていった。その彼にだ。課長が言うのだった。
「どうだい?今は」
「あの、まさか」
「そうさ。私もそうだったんだよ」
「奥さんに服を選んでもらってですか」
「そう、いい服を選んでもらってね」
 それでさらにだというのだ。
「いい服を着てると。服に釣り合う様にって思うだろう」
「確かに。それにですね」
「そう、選んでくれた妻の為に」
「頑張ろうとも思って」
「余計にいいんだよ。それが部長の家族なんだよ」
 そうなっていくとだ。課長は彼に話す。
「それで特に英美里ちゃんはね」
「そういうことが特にですか」
「凄いんだよ。服、外面からよくなって」
 そしてさらにだった。
「内面からも出て来てだよ」
「余計にいいんですね」
「そうい
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