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第四章

「そうしなくてもね」
「いいの?」
「そう、いいの」
「けれどね。どうしてもね」
「だからね。気にしなくていいのよ」
「じゃあどうすればいいのかな、僕は」
「すぐには無理だろうけれど」 
 僕のこのどうしようもなく抑えきれない気持ち、それはというのだ。
「それでもね」
「じゃあもっと心を落ち着けて」
「一緒にいて」
 僕に顔を向けて。そのうえでの言葉だった。
「そうしてくれるかしら」
「そんなに。僕って鬱陶しかったかな」
「鬱陶しいとかじゃなくて」
「違うの?そういうのじゃなくて」
「じゃあ一体」
「戸惑うから。だから私なんて普通の女の子だから」
 照れ臭そうに僕に言ってくる。
「そこまでね。普通に付き合ってね」
「ううん、戸惑ってたんだ」
「じゃあ貴方が私に必死になられたらどうするの?」
「驚くよ、それは」
 僕はすぐに答えた。
「だって。君のことが」
「好きでなくてもよね、貴方が私のこと好きでなくとも」
「何だって思うよ。それにそこまで好きでいてくれたら」
 僕も同じだった。そこまで僕を好きでいてくれるなら。
 そうしたことを言われて感じてだ。僕もわかった。
「ああ、そういうことなんだ」
「そう。わかってくれた?」
「そういうことなんだね。そうだったんだね」
「そうなの。普通に好きでいて欲しいの」
「凄く難しいけれど」
「少しずつでいいから」
 僕に言ってくれる。いきなりというのは無理だとわかってくれているから。
「そうしてね。お願いね」
「うん、じゃあ本当に少しずつね」
「けれど。私凄く嬉しいわよ」
 顔を見上げて。彼女は僕の横で笑った。
「そんなに好きなってもらって」
「嬉しかったんだ」
「嬉しくない筈ないじゃない。好きになってもらうだけでも嬉しいのに」
 ただそうなってもらうだけでもそうなのに。そういう言葉だった。
「こんなに一途に必死に好きになってもらって。私幸せよ」
「僕が幸せだけれど」
 この娘を好きになれて。けれど僕だけじゃなかった。
「君もだったんだ」
「好きになることが幸せなら好きになってもらうことも幸せよ」
 上を見上げたまま。僕に笑顔で言ってくれている。
「私も貴方好きよ。そう言ってもらって幸せ?」
「当たり前だよ。好きだから」
「だから同じよ。だからこれからはね」
「落ち着いてお互いに」
「幸せでいよう。そうしよう」
「うん、じゃあ」
 僕は彼女のその言葉に頷いた。そうしてだった。
 二人で登校して朝のデートを過ごした。本当に少しずつだけれど。
 僕はこの娘への気持ちを大人しいものにしようと思った。好きであること自体は変えないまでも。 
「僕、一緒にいるからね。気持ちの大きさは変わらないけれど静かに
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