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世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
外伝1 国別対抗戦予選リーグ編 1話
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「随分と調子が良さそうじゃないキーチ」

 独特のイントネーションで呼ばれた少年は、白と青のラインが入ったパーカーのフードを被ったまま振り返った。そのフードの背中には小さく『TEAM Arc Catz』とロゴが入っている。
 キーチと呼んだ女性は少年に比べて背丈が大きく、女性の身長は170を超えており細くはあるが均整の取れた肉体であるためか中性的に感じさせる。腰ほどまである長髪は首元でシュシュで纏めていた。

「……別にそんなことありませんよアヤネさん」

 キーチと呼ばれた少年、鬼一は淡々と感情を感じさせない声色で背後から声をかけてきた女性に応答する。
 少年と同じように白と青のラインが入りチーム名が刻まれたパーカーを羽織ったアヤネは、少年のその色のない言葉に困ったように笑う。久方ぶりに会ったというのに可愛げのない弟分をどうしてやろうかと首を傾げる。

「子供の時からそんな不景気なツラしてるとこの後シンドイよ? まぁ、それはいいわ。どう? そっちは無事に予選抜けられそう?」

 アヤネ自身、鬼一の成績はよく理解している。低迷していたこの弟分がようやく少しずつ浮上してきたのだ。自然とその内容を目を追っかけるのは当然のことだった。
 ただこの弟分はなにかしら喋っていないとどこかに姿を消してしまうから、引き止めるために適当な話題を振っただけだ。純粋にお喋りしたいという思いもあったからだが。
 鬼一はその言葉にアヤネから視線を切って無言のまま1点を指差す。その指先にはこの予選の成績を表示している電灯掲示板があった。

「……ふーん、そっちのリーグはあの天才さんとキーチの2強の世界みたいね。次の最終戦で勝った方が決勝リーグ、か」

 今年度から新しく始まった、過去の大会と比べても一際規模の大きいこの大会、国別対抗戦。世界各国で火蓋を切った予選リーグは熾烈を極めている。
 日本だけでも2000人以上参加しており、ツアーポイント上位者は予選トーナメントを無条件で突破し2次予選であるこの予選リーグからスタートなる。アヤネもその1人だ。しかし鬼一はまだポイントをほとんど獲得できていない。その事実だけでも鬼一の成績が振るっていないのは間違いなかった。

 しかし、1500名以上で繰り広げられた1次予選トーナメントを突破して、この2次予選リーグでも現在全勝中。残りは1戦。相手は日本プロゲーマー史でも最古参に部類される女性プレイヤーが相手だ。
 大方の予想としては鬼一不利と読まれていた。アヤネから見ても鬼一の不利は避けられないと踏んでいる。キャラの相性や経験差などもあるが、それ以上に鬼一のメンタルが問題。
 鬼一はこんな大舞台を1度たりとも経験したことがない。e-Sportsの大舞台ともなればどうしても『慣れ』は必要なのだ。『若さ』か
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