26部分:第四幕その四
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第四幕その四
スカルピア 「これで完全に私のものだ。では熱い接吻でも」
ゆっくりと手を広げ抱き締めようとする。しかしその瞬間にトスカは彼の懐に飛び込んでテに隠し持っていたナイフを彼の胸に深々と突き刺す。
トスカ 「これがトスカのキスよ!」
スカルピア 「うぐうっ・・・・・・!」
その顔が凍りつく。怪物のような恐ろしい顔でトスカを見ながら倒れていく。
スカルピア 「く・・・・・くそ・・・・・・」
それでもトスカの方へ行こうとする。しかしトスカは彼を避け扉の方まで退く。
スカルピア 「ぐぶっ・・・・・・」
前のめりに倒れる。そのまま仰向けになって倒れる。そうして動かなくなる。
トスカ 「(そんなスカルピアを見て)死んだの?」
返事はない。ここで手の血に気付く。スカルピアから目を離さないまま食卓のところへ行って指洗いとナプキンで手と指をよく拭く。そうしてスカルピアを見て言う。
トスカ 「そう、旅券」
スカルピアがまだ持っている旅券に気付く。それを手に取ろうと亡骸に向かう。
その旅券を手に取って持ち上げようとする。ここで太鼓の音が聞こえる。死刑を知らせる太鼓の音である。トスカはその音に思わず飛び上がり旅券から手を離してしまう。
再び旅券を手に取る。するとスカルピアの手も一緒にあがる。トスカはこれに怯えを抱くがそれでも旅券を奪う。スカルピアの腕は虚空を掴んだまま崩れ落ち床で数回はねて動かなくなる。トスカはその旅券をドレスの胸元にしまう。それから事切れているスカルピアを見る。スカルピアの顔は目を大きく見開いたまま苦悶の顔である。
トスカ 「この男の為にローマ中が震え上がっていたのね」
一言そう呟いて立ち去ろうとする。ここで扉の左右に一つずつ燭台があるのに気付く。
それに灯されている火を消そうと思った。だがふと吹きかけた息を止めた。そうして左右のそのそれぞれの蝋燭を手に取る。それをスカルピアの遺体の側で一本を彼の頭の右に、もう一本を彼の頭の左に置くのだった。いささか儀式めいている。
次に部屋を見回す。スカルピアの机の上に一本の十字架があるのに気付く。
それを手に取り恭しく運び、スカルピアの遺体の側まで来ると跪いてスカルピアの胸の上にその十字架を置く。それから祈りを捧げ胸の前で十字を切りつつ立ち上がる。
最後に二本の蝋燭以外の全ての蝋燭を消した。そして用心しつつ扉を静かに、少しだけ開けた。
様子を窺いつつ身を差し入れて静かに外へ出て扉を閉めた。
扉が閉められた時風が微かに入った。風はスカルピアの遺体のところまで舞い込んで来る。
風で蝋燭の火がゆらゆらと揺れる。両方共もう少しで火が消えそうになる。
だが風が止んだ。かろうじて消えなかった。そして消
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