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満願成呪の奇夜
第12夜 共闘
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近していた。

「危ないっ!!」

 反射的にトレックは叫んだ。呪獣の攻撃力は人間の骨など容易にへし折る威力がある。まともに受ければペトロ・カンテラの照射範囲外に吹き飛ばされるし、当たり所が悪ければ即死だってあり得る。だが、トレックの心配をあざ笑うようにガルドはそれを無視して突っ込む。
 ぶつかる――!!そう確信して援護のために銃を構えたその時、鋭い声が飛んだ。

「下を抜けろ!!」

 地面に杖を突きたてたステディの足元が濁った光を湛え、直後にガルドに迫った黒い腕が突如として隆起した石畳交じりの地面に弾き飛ばされた。『地』の呪法で地面を操ったのだ。ガルドは腕の軌道が上方に逸れたことで難なく呪獣を潜り抜けた。しかし、抜けた先に漆黒の影が揺らめいた。

『レ゛エ゛エエエエエエエエッ!!』

 押し潰されて強引に吐き出されたような重低音の咆哮。未だ無力化が為されない最後の一体の呪獣が待ち伏せるようにガルドの行先に立ちはだかった。ペトロ・カンテラの光が体を蝕むのも意に返さない強烈な殺意が宿った紅い瞳がギョロリとガルドを捕え、汚らしい唾液を撒き散らしながら大口を空けて突進する。
 呪獣の攻撃方法の中でも突進は最悪の技だ。獣の敏捷性を最大に活かし、しかも走行中にある程度方向転換が出来るために回避が難しい。しかし、トレックは今度は援護しようと考えなかった。彼の視界に、既に拳銃を構えて呪言を呟くドレッドの姿が映ったからだ。

「消し飛びたまえ。『炎の矢(フレッツァ・リャーマ)』――!」

 瞬間、トレックが使ったそれの2倍は威力があろうかという炎が一瞬で突進する呪獣に着弾し、身体を中ほどから真っ二つに引き裂いた。攻撃の余波が周囲を照らし、熱風が頬をなぜる。

「……『炎』が得意分野か。ちぇっ、俺が使った一発と同じ術とは思えない威力だ」
「援護のために少々威力過剰になっただけだよ。ただ敵を撃つだけならば込める力はもっと節約した方がいい。無計画では後に響くからな」

 そうは言うが、ここまであからさまに技量の差を見せつけられると内心では面白くない。トレックはいつも他人より多い呪法を扱えるが、そのどれもが特定属性を得意とする呪法師には敵わなかった。教導師からは「5大属性全てを操れる癖に贅沢をいうな」と不思議な人間を見る目で言われたが、器用貧乏よりは一部の能力に特化していた方が結果的に勝率は高いとトレックは考える。

 見れば、ドレッドの放った『炎の矢』が撒き散らした炎をガルドの持つ縄が吸収し、炎の鞭となって転倒していた呪獣たちに巻き付けられる。全身を劫火で焼き尽くされ、呪獣は黒い滓となってぼろぼろと地面に崩れ去り、やがて消滅していった。
 かなりの高熱を纏いながらも燃え尽きない縄は、最後に縄で縛った呪獣を焼き尽くしてから纏う炎
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