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トスカ
1部分:第一幕その一
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第一幕その一

                   トスカ
           第一幕  聖タンドレア=デッラ=ヴァッレ教会
 内部は高窓から差し込む黄金色の光で眩く照らされ巨大なドームがそれを覆っている。バロック様式の楽園と聖アンドレアを描いたフラスコ画等多くの芸術作品で飾られている。その中にはまだ作成途中の絵画もある。 最初に大砲の音。
 豪奢な寺院の左手にダークブラウンの木の扉があり右手に貴族達の礼拝堂、中央には布で覆われた何やら巨大な絵がある。作業台も整えられそこには絵の具や筆も無造作に置かれている。舞台が開けるとそこに一人の男が入って来る。
声       「ここか」
 何かに怯えながら必死に辺りを探る。何もないのを確認してまずは一息つく。服はボロボロの囚人服で見るからに哀れな有様である。その服で何かを必死に探すように再び寺院の中を見回す。
 礼拝堂のうちの一つを見て頷く。そうして懐から鍵を出す。それで開けて中に入る。ガチャリと何かが締まる音がする。そうして彼はその礼拝堂の中に隠れる。
 暫くして堂守のエウゼッペとカヴァラドゥッシの従者のゼッナリーノがやって来る。ゼッナリーノの籠にはパンとコールドチキンに無花果、ワインが入っている。
エウゼッペ  「ゼッナリーノさん」
 その籠、特にワインのボトルをじっと見ている。かなり物欲しげだ。
ゼッナリーノ 「何でしょうか」
エウゼッペ  「そのワインはグラグナノではないですかな?」
ゼッナリーノ 「(呆れた顔で)そんな筈がありません」
エウゼッペ  「おやまたどうして」
ゼッナリーノ 「これは白ワインですよ」
 籠の中のボトルを見せて言う。
ゼッナリーノ 「グラグナノは赤ではないですか。違いますか?」
エウゼッペ  「そうだったかな。それじゃあそれはマルサラか」
ゼッナリーノ 「はい、それです」
 憮然とした顔で頷く。
ゼッナリーノ 「閣下のお気に入りの」
エウゼッペ  「(それを聞いて首を傾げさせて)鶏に白か。閣下も変わっておられるな」
ゼッナリーノ 「そうでしょうかね」
エウゼッペ  「しかも安い酒を。閣下は舌が肥えておられる筈なのにな」
ゼッナリーノ 「まあそれはその」
 苦笑いをして彼に応える。
ゼッナリーノ 「御気になさらずに」
エウゼッペ  「そうか。しかしやはりな」
 引っ掛かるものを感じながらも言う。
エウゼッペ  「変わっておられる」
ゼッナリーノ 「はあ」
エウゼッペ  「だからフランスなんぞ支持なさるんだろうが。それにしてもだ」
ゼッナリーノ 「あの、エウゼッペさん」
 エウゼッペを咎める目でみやる。
ゼッナリーノ 「それは」
エウゼッペ  「済まぬ済まぬ。御主の御主人を馬鹿にしたわけではないぞ」
ゼッナ
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