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Blue Rose
第十三話 人間だからその九

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「されてはどうでしょうか」
「確かに。それなら」
 その話を聞いてだ、優子も頷いて答えた。
「弟のことは知られませんね」
「知られてはです」
 どうしてもというのだ。
「厄介なので」
「そうしてですね」
「真実を隠しましょう」
「真実は隠されるべきですね」
「真実は残酷なものです」
 こうも言った院長だった。
「それは明かされるべき時もありますが」
「そうしてはならない時もありますね」
「人を守る為には」
「真実はですね」
「隠されねばならない時もあります」
 まさにというのだ。
「それがです」
「今の弟ですね」
「そうです、それが人を守る為なら」
「真実は隠されるべきですね」
「そうあるべきです」
「何でも公にしていいものではありませんね」
「情報開示と言えば聞こえはいいですが」
 よくマスコミが使いたがる言葉だ、ただし自分達は情報を独占して隠蔽するのを常にしている。これはダブルスタンダードと言うべきであろう。
「しかしです」
「人を傷つけるのならば」
「あってはならないことです」
「個人情報は特にですね」
「個人情報を狙う輩もいます」
 このこともだ、院長は言った。
「そしてそれがです」
「マスコミの中にもですね」
「いますので」
「細心の注意が必要ですね」
「私も全力を尽くします」
 院長はまたしても優子に約束した。
「先生の弟さんの為に」
「申し訳ありません」
「先生がそう言われるには及びません」
 この言葉には微笑で返した院長だった。
「それにはです」
「どうしてでしょうか」
「はい、これは医師として当然のことなので」
「患者の個人情報を守ることはですか」
「そうです、これは義務です」
 医師としての、というのだ。
「ですから」
「弟のことも」
「全力で、です」
「守って頂けるのですね」
「診察を受けた方の診察に関することなら」
 まさにというのだ。
「守ることが絶対のことなので」
「そうして頂けるのですね」
「そうです、ですから」
「私の先程の言葉は」
「出される必要がありません」
 そうした言葉だったというのだ。
「お気になさらずに」
「では」
「弟さんのことは私もお守りします」
 それを当然のこととして、というのだ。
「そうします、それでは」
「弟さんをお守り下さい」
「そうします」
 最後は優子が誓った、優子は院長に深い信頼をこれまで以上に抱きそのうえで院長室を後にした。そして。
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