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Three Roses
第二話 幼きよき日々その九
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「枢機卿の方々のうち幾人か、必要とあらばです」
「猊下にもだな」
「はい、法皇猊下にもです」
 その法皇庁ひいては旧教の教会の頂点に立つ至高の存在だ。神の代理人とも言われその権勢は今も尚絶大なものだ。
「金銀なり財宝をです」
「今の猊下はな」
「そうしたものもお好きです」
「無類の女好きでありな」
「物欲のかなり強い方です」
 神の代理人という立場でもというのだ。
「それで」
「そうしたものも贈るか」
「衝突、最悪の場合戦争をするよりも」
「贈りものでことが済めばな」
「こんなにいいことはありません」
「戦争になれば金を使う」
 王は眉を顰めさせて言った。
「それも相当にな」
「国力を消耗します」
「将兵達も失う」
「あれは恐ろしい浪費です」
 それ故にというのだ。
「ですから戦よりもです」
「そうしたことで済めばな」
「これ以上いいことはありません」
「全くだな、だからアントワープ家も謀略を使うな」
「古来より」
 それこそ何百年も前からだ、アントワープ家は謀略を駆使してエヴァンズ家を戦争以外の手段でも苦しめてきたのだ。
 だからとだ、エヴァンズ家である彼等も言うのだ。
「ですから我々も」
「それを使い」
「はい、法皇庁を抱き込みましょう」
「アントワープ家は法皇庁とも対立しているしな」
「法皇庁の領土も狙っていました」
「半島のな」
「あの国が半島に攻め込んだ理由は領土や貿易、その他の富を狙ってのことですが」
 その中でというのだ。
「そこには法皇庁の領土も含まれていました」
「そして実際に法皇庁にも兵を入れたな」
「帝国とも激しく戦いました」
「そしてかつて法皇を自国に監禁し傀儡の法皇も立てた」
「それにより法皇庁が分裂しましたな」
 彼等の時代より百年以上前のことだ、アントワープ家は法皇庁と対立しその時の法皇を兵を送って捕らえたのである。
「あれは暴挙でしたが」
「その暴挙がまだ尾を引いている」
「そして法皇庁はロートリンゲン家と持ちつ持たれつです」
「旧教でありながらもな」
「法皇庁にとっては新教以上の敵です」
「下手をすれば異教以上のな」
「ですから」
 そうした事情があるからこそというのだ。
「我々がアントワープ家と対するのなら」
「法皇庁もだな」
「我々を害そうとはしません」
「そうなるな、ではだ」
「はい、ですから」
「法皇庁にも手を回そう」
「御意」 
 大公は家臣として王に応えた。
「では」
「そうしよう、ロートリンゲン家そして法皇庁と和し」
 そしてというのだ。
「アントワープ家と対する」
「そのうえで」
「国内の王権も固めよう」
「そうしていきましょう」
「そして縁組はな」
「マイラ様とですね」

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