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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■SAO編 主人公:マルバ■■
二人は出会い、そして◆蘇生
第十八話 思い出の……
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シリカの半歩先を歩いていたマルバはちょっと困った顔で振り返って尋ね返した。
「どうしてまた……そんなことを?」
「私に似てるって言ったじゃないですか。現実のこと聞くのはマナー違反だとは思うんですが、どうしても気になっちゃって……」

マルバは視線を前に戻し、しばらくためらってからゆっくりと話し始めた。
「……(あおい)っていう名前でね、仲のいい妹だった。僕が中学校二年になる前までは、だけどね。」

マルバは目を閉じる。何度も夢に見るあの思い出したくもない光景が脳裏に浮かんだ。
音もなく近づく軽トラックの黄色いバンパー。そして、その前で……為す術もなく死ぬはずだった、妹の姿を。
「僕は中学校二年の始業式に向かう時、妹と学校まで一緒に行ったんだ。でも僕は結局始業式には出られなかったのさ。交通事故だった。急性心不全を起こして気を失った運転手が、横断歩道にブレーキを踏まずに突っ込んできたんだ。その時死ぬはずだったのは妹だった。僕は無我夢中で前を歩いていた妹に体当たりしたから妹は轢かれなかったんだけど、僕は間に合わなくてね。おもいっきり撥ねられたよ。地面にぶつかった記憶はないから、きっと空中で気を失ったんだろうね。軽トラックはブロック塀を吹き飛ばして全損、僕は横に飛ばされたからぎりぎり命だけは助かったって感じだった。」

マルバは小さくため息をつく。
「目覚めたのは病院だった。白い天井を見つめたっけな。すぐに妹が飛んできて、何度も何度も謝ったんだ。私のせいで、ごめんね、ってね。……でも、それは運が悪かったとしかいいようがない事故でね。結局のところ誰のせいでもなかったんだよ。僕のせいでもなければ、運転手のせいでもない。もちろん、妹のせいのはずがなかったのさ。……運転手だって急性心不全のところを大量出血と全身打撲で瀕死状態。僕よりひどい状態だって聞いたよ。生きているのが不思議なくらいってね。ゴールドカードの持ち主だったらしい。免許を取ってから無事故無違反っていう運転手の模範みたいな人でね。最初に起こした事故が心不全による不可抗力で、更に人を一人撥ねて後遺症を残しちゃうなんて彼も運がない人だ。」
「えっ、後遺症……?」
「そう、後遺症。僕は撥ねられてから半身不随になっちゃったんだ。原因不明だけど幸い軽度だったものだから、松葉杖さえあれば歩けるようにはなったよ。右半身だったから、ペンが持てなくて勉強するのが大変にはなっちゃったけど、僕は最初半身が麻痺したって生きてたんだから幸運だったって思った。でもみんなはそうじゃなかった。こんな風になっちゃってかわいそうだ、かわいそうだって言ってね。生きてたことを祝って欲しいって何度思ったことか。一番ひどかったのは妹だった。お兄ちゃん、ごめんね、ごめんね、私のせいでごめんね、って言って何度も泣くんだ
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