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青砥縞花紅彩画
20部分:雪の下浜松屋の場その五
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雪の下浜松屋の場その五

南郷「ううむ(ここで考えるふりをする)」
弁天「私は構わぬ。これでよいな」
南郷「わかり申した。(ここで幸兵衛に対して言う)これ」
幸兵「(顔を上げて)はい」
南郷「ここはお嬢様に免じて許してやる。よいな」
幸兵「わかりました。それでは(ここで与九にか顔を向ける。与九はそれを受けて顔を上げる)」
幸兵「あれを」
与九「へい」
 与九は後ろから何かを持って来る。
南郷「何じゃこれは」
幸兵「どうかお収め下さい」
南郷「(凄んで)おい」
幸兵「は、はい」
南郷「たった十両で済ませるつもりか!?何を考えていやがる」
与九「た、足りませぬか」
南郷「殿に知られたら腹を切らなくちゃなんねんだぞ。十や二十で足りると思っているのか」
幸兵「そ、そうでした。これは失敬。それではこれで」
 与九が五十両持って来る。南郷はそれを一瞥した後でまた言う。
南郷「やはり貴様等全員叩き切ってくれる。そこになおれ」
与九「(怯えて)そ、それだけはご勘弁を」
南郷「いいや、ならん。そこになおれ(と言いながら刀に手をやる)」
与九「どうかお許しを」
赤星「お願いでございます」
南郷「ならん、ならんぞ」
幸兵「そこを何とか」
南郷「武士に二言はない。さあ切ってやるから全員そこになおれ」
与九「お止め下さい」
幸兵「どうあってもお止め下さらぬのですか」
南郷「そう言っておるだろうが」
幸兵「(思い入れあって)わかりました。(与九に顔を向けて)これ」
与九「はい」
幸兵「もっと持って来るように」
与九「(残念そうに)わかりました」
 そして彼は奥からまた金を持って来る。さらに五十両、合わせて百両となる。
幸兵「(その百両を差し出して)これで如何でしょうか」
南郷「(それを見て唸る)むむむ」
幸兵「私共のせめてもの謝罪でございます」
南郷「本来なら到底許せぬところであるが(そう言いながら刀から手を離す)」
南郷「ここはそのほう等の誠意に免じて許してつかわそうか」
幸兵「お気を鎮めて下さいましたか(ほっとして)」
赤星「お許し下さいましたか」
南郷「拙者も鬼ではないからのう。では」
 そしてその百両を懐に納める。
南郷「ではな。あと服も貰っておくぞ」
幸兵「はい」
宗之「どうかお納め下さいませ」
南郷「わかった。ではお嬢様」
弁天「はい」
南郷「帰りましょうぞ」
 二人は立ち上がろうとする。ここで左手から日本駄右衛門と忠信利平が出て来る。
日本「あいや、待たれよ」
南郷「(左手に顔を向けて)むっ」
日本「よろしいでござるかな」
南郷「待てと申されるのは拙者等がことでござるかな(わざと白井権八風に言う)」
日本「左様でござる。先程の騒動でござるが」
南郷「はい」

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