暁 〜小説投稿サイト〜
艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第六話 譲れないもの
[2/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
い!すみません、練習を御邪魔してしまって。」
翔鶴が上ずった声で直立不動になりながら答えた。
「す、すみませんでした!」
紀伊も深々と頭を下げた。
「いいえ、気にすることはありません。むしろそんなに気を使わないでください。」
鳳翔が首を振りながら言った。
「お恥ずかしいですが、私も久々に出撃するのです。多少腕が鈍っているような気がして練習していました。紀伊さん、この度の作戦、よろしくお願いしますね。」
「は、はい!!よろしくお願いいたします!!」
空母の大先輩に声をかけられた紀伊は上ずった声で返答した。
「こちらこそよろしくお願いします。」
鳳翔が頭を下げた。
「練習のお邪魔になるといけませんから・・・・。」
紀伊たちが辞去しようとすると、後ろから声がかかる。鳳翔が呼び止めていた。
「できましたら、紀伊さん、あなたのお力をぜひ拝見してみたいのですが、手合せいただけますか?」
紀伊は仰天した。いきなりの話に翔鶴も驚いた眼をしている。
「そ、そんな、無理です。大先輩を相手に練習など・・・・私が・・・・・。」
言葉を失った紀伊を鳳翔はじっと見ていたが、やがて一つうなずくと口を開いた。
「紀伊さん・・・・そうですね、率直に言いましょうか。この度の作戦において、あなたの力を疑問視する声が出てきています。いいえ、勘違いしないでください。私はあなたを信じています。ここに来る途上第六駆逐隊を救ったのも、先日第七艦隊を救ったのも、あなただからです。」
そんなことはありません、と紀伊は否定したくなったが、鳳翔の真剣な様子ではそれを言うことをはばかられた。
「ですが、ほかの方は・・・・。」
鳳翔は一瞬唇を噛んで視線を逸らした。つらそうだった。
「ほかの方はあなたを認めてはいません。ごめんなさい、こんな言い方をしてしまって。」
「いいえ、そうだと思います・・・・。」
紀伊はそう言いながら胸が苦しくなる思いだった。自分の力の足りなさは自覚している。だが、それが外から形となって自分に突きつけられることは、想像していたよりもずっと耐え難い気持ちにさせられる。
「私はそれがとても嫌なのです。あなたには素晴らしい才能がある。でもその才能を生かし切れていない。あなたが自信を無くして卑屈になっているからです。」
紀伊はびくっと身を震わせた。先ほどとは違う感情がこみ上げてくる。卑屈・・・卑屈・・・・卑屈!とても嫌な言葉だった。はられたくないレッテルだった。
「だからあなたに一日でも早く自信をつけていってほしい。それが私の本心であり提督のお気持ちでもあります。」
紀伊は考え込んだ。さっき翔鶴が言っていたように鳳翔は空母として最精鋭の力を持っている。その鳳翔に食らいつくことができれば、少しでも自分の自信になるのではないだろうか。ほかならぬ鳳翔自身も
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ