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Three Roses
第一話 運命の薔薇その五

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「大公がいればな」
「太子もこの国も」
「安泰ですね」
「しかも大公は頑健だ」
 その健康の話もした。
「そう簡単には死なぬ」
「はい、今まで病気一つしたこともありません」
「何一つとして」
「だからですね」
「あの方については」
「余は心配していない」
 それこそ全く、というのだった。
「あの者がいるから余は政を過つことも国を守ることが出来たしな」
「これからも」
「あの方がおられれば」
「よい、では部屋に戻るとしよう」
 王の間にというのだ。
「政の時間が近いからな」
「では今日も」
「ご政務にですね」
「励むとしよう」 
 実際にと言ってだ、そしてだった。
 王は己の言葉通り政をはじめた、その時に玉座のすぐ下にだった。
 彼によく似た背筋のいい男が立っていた、髪は丁寧に整えられているが清潔でかつ質素な身なりをしている。その男がだ。
 王に何かと助言をし彼と共に政をあたっていた、そして。
 王は彼にだ、こう言ったのだった。
「大公、今日も済まぬな」
「いえ」
 大公と呼ばれた彼は王に畏まって応えた。
「これも務めです」
「卿のか」
「はい、臣下のです」
 こう言うのだった。
「ですから」
「当然と言うのだな」
「左様です」
「そうか、その言葉覚えておく」
 これが王の返事だった。
「それでは次の件だ」
「はい、そのことですが」
 廷臣の一人が王に申し出て来た、そうして話すのだった。
「隣国がです」
「またか」
「はい、動きを見せています」
 即ち侵攻の素振りを見せているというのだ。
「またしても」
「そうですか」
「はい、ですから」
 それで、というのだ。
「我が国もです」
「手を打たねばならんな」
「どうされますか」
「今我々に攻めるだけの力はない」
 これが王の考えだった。
「だからだ」
「守りを固めますか」
「あの国にも強く攻めるだけの力はない」
 王はこうも言った。
「ならばだ」
「国境を固めましょう」 
 大公が王に注進した、ここで。
「弓兵を中心として」
「そうしてだな」
「はい、こちらが先に守りを固めればです」
「あの国も攻めては来ないか」
「おそらく少し攻めて彼等の領地を少しでも増やしたいのでしょう」
「だからだな」
「こちらは隙を見せないことです」
 領地を攻め取られる様なそれをというのだ。
「ですから」
「わかった、ではだ」
 王は大公の言葉を聞き断を下した。
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