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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十話 決断
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で、副司令長官はどうする」
「ローエングラム伯を持ってきます。まあ、司令長官と副司令長官は逆でも構いませんが」

誰でも考えつく案だ。帝国の上層部が考えなかったと思うか? そう思うならお前は彼らを甘く見すぎだ。彼らとて同じ事を考えたろう。その上でこの人事を行なった。その意味をお前は判っていない、いや判ろうとしない……。

「なるほど。若さと老練さを組み合わせるか」
「はい。このほうが安定するでしょう。それにメルカッツ大将の人望も見逃せません」
俺が否定しないので同意見だと思ったらしい。自信ありげに話してくる。

人望か。年を取っていれば人望が有るというわけか……。残念だがボルテック、ヴァレンシュタイン大将の人望も決してメルカッツ大将に劣らんぞ。

「私はそうは思わんな」
「?」
「平時ならそれでいい。しかし、今は非常時なのだ」

「非常時ですか?」
「いつ皇帝が死ぬかわからんのだぞ、補佐官。それなりの対策が要るだろう」
「……」

ボルテック、お前は軍のことしか考えていない。しかし、軍も国家の一部なのだ。帝国の政治情勢、社会情勢、そして宮中の情勢を踏まえた上で考えなければならない。そして帝国の上層部はそれを考えた上で決断したはずだ。

「帝国の上層部が恐れるのは、軍の遠征中に皇帝が死ぬ事だ。そしてそのことで内乱が起きるのを恐れている、判るな」
「はい」
本当に判ったか。これが前提なのだぞ。

「ローエングラム伯、メルカッツ大将は戦場の将だ。確かに戦場では強いのかもしれん。しかし、今帝国で本当に必要とされているのは、万一の場合内乱を防ぐ謀略・政略センスのある将なのだ」

「……ヴァレンシュタイン大将ですか」
「そうだ、帝国の上層部にとってはローエングラム伯よりもヴァレンシュタイン大将を副司令長官に持ってくることが大事だったろうな」
実際、一度内乱を防いでいる。その事実は大きいだろう。

「しかし自治領主閣下、今まではヴァレンシュタイン大将は副司令長官ではありませんでした。何故今、副司令長官にする必要があるのです?」
不思議そうにボルテックが訊いて来る。

「ミュッケンベルガー元帥が強すぎたからだ。強すぎたから副司令長官をおく必要が無かった。つまり宇宙艦隊の残留部隊を指揮するものが居なかった、だから彼らは暗黙の了解で皆ヴァレンシュタイン大将の命に従ったのだ」
「……」

「副司令長官を置けばどうなる、残留部隊は副司令長官の命に従うだろう。ヴァレンシュタイン大将は、憲兵隊と帝都防衛軍だけで内乱を防がねばならん」
「……」

「もし、副司令長官がブラウンシュバイク、リッテンハイムに与したらどうなる。内乱の勃発は必至だ」
「なるほど」

「宇宙艦隊司令長官が強ければ問題は無い。しかし
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