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ソードアート・オンライン―【黒き剣士と暗銀の魔刃】
四節:鍛冶屋リズベット
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 四十八層の主街区『リンダース』。


 そこのとある一角に、水車のついた職人クラスを選択したプレイヤー用のプレイヤーホームが存在していた。


 重く心地よい水車の音がリズム良く聞こえ、窓から見える店内は片手剣に両手斧に鎧と鍛冶屋の店らしい事が、そしてグレードの高さからそれなりの店である事が分かる。


 少し耳を澄ませば、聞こえてくるのは熱せられた鉄をリズミカルに打つ、鍛冶職人の魂たる金槌の音――――






「何ごく当たり前かってぐらい呑気に寝てんのよあんたは!! というかこんな途中で寝ないわよね普通!?」
「…………あ? ……ぬぅ……」
「はっきり返事しなさいよあんたはぁぁっ!!」


 では無く。

 とある“もめ事”から来る、一人の少女の怒鳴り声であった。















 順を追って、この状況が生まれた経緯を説明しよう。



 リンダースにあるプレイヤーホームの主、鍛冶職人のリズベットという名の少女は、何時もの様にオーダーを受け、依頼数が少なかったか午前中に終わらせて暇となっていた……のだが、この手軽さは前日徹夜した苦労の裏返しであり、おまけに寝不足なのに眠れないというもどかしい状態にリズベットは陥っていた。

 彼女の見た目はピンク色のショートヘアに桧皮色のエプロンドレスと、全く持ってイメージしやすい鍛冶職人とはほど遠い見た目ではあるが、これは彼女自身が行ったコーディネートでは無い。

 彼女の友人から童顔である為通常の様なつなぎは似合わないと、そして客を寄せるならばもっと見た目に気を使うべきだといじられ、本人的には不本意であるものの人形的な容姿に落ち着いたのである。

 またリズベットは片手鎚スキルをほぼマスターしている上、レベルも攻略組には届かないがそこそこな物であり、それがより良い素材を仕入れてより強い武具を作れる一端を担っているのは言うまでもない事だ。


 証拠に、彼女の店に置いてある品は全て要求パラメータが軒並み高い。


 彼女の容姿を弄りに弄った件の友人もまた攻略組且つお得意様で、彼女はアインクラッドの構造上、横からしか見え無い青空を眺め、突破せぬまでは上へ上がらせないとばかりに空へ蓋をしている上層の床底部分を見上げる。


 確か六十層の攻略がどうにか終わり、今現在攻略組は六十一層の攻略の真っ最中だという事、彼女の友人が武具のメンテナンスに来たのは数日前の事だったのでそろそろ訪れるかもしれないという事、オーダーが無いと極端に暇になるという事、眠いのに寝れないという事、それらを頭の中でぐるぐる回しながら、リズベットは多少のイライラを紛らわす為かやる気無く椅子を揺らした。


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