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歌集「春雪花」
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 山の端の

  想ふや遠く

   月影の

 落つるは侘し

    闇ぞ残れり



 久し振りに月明かりの差す夜更け…その月影に彼を想い出していた…。

 だが…月は私の心を知ってか知らずか、暁を待たずして山影へとその身を落としてしまった…。

 後に残ったものは…ただ物悲しいばかりの暗き闇だけであった…。

 まるで…それが私の未来だと言わんばかりに…。



 声もなく

  影もなかりき

   暁の

 想へば思ふ

    時の虚しさ



 ここに彼の声はなく…その姿も見ることは出来ない…。

 そんな当たり前のことを、明け方…ほんの少し山の端が白み始めた頃に思った…。

 彼を想えは想うほど…この過ぎ行く時間を虚しく思わずにはいられず…白みゆく世を、厭わしく思わずにはいられなかった…。




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