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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十三話 第三次ティアマト会戦(その2)
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私には擬態としか思えない。

敵の左右両翼にはほとんど戦闘に参加していない部隊がある。周りは皆、寄せ集め部隊の脆さが出たと言っているが本当にそうだろうか。何度かドーソン大将に警告したが全く受け入れてもらえなかった。

あれが予備部隊だとすれば敵は未だ余力があるということだ。いやむしろあれは反転攻勢のための部隊に違いない。敵の狙いはこちらを引きつけておいての反転攻勢だろう。中央部隊が攻勢を強めているのも、両翼が当てにならないから中央を突破しようとしていると思わせる策だろう。

敵は短期決戦を目論んでいる。こちらは敵の思惑に乗りつつある。絶望感と無力感が私を包み込む。酷い戦いになりそうだ……。


■帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ エルネスト・メックリンガー


艦橋は憂色に包まれている。戦況が良くないことに不安がっているのだ。既に何度かあれは擬態だと説明した。しかし、なかなか信用できないらしい。ミュッケンベルガー元帥は簡易ベッドで休んでいる。軍医がそばについているが容態は安定しているようだ。

指揮官と言うのがこれほどきついものだとは思わなかった。改めて宇宙艦隊司令長官の任務の厳しさに慄然とする。このような仕事を何年もすれば体に支障が出るのも当然だろう……。

中央が攻勢を強め、両翼が少しずつ後退していく。両軍の陣形はU字型になりつつある。もう少しだ、もう少し敵を引き付けたい。敵はこちらの思惑に乗りつつある。もう少し我慢するんだ、エルネスト。

「敵、左翼、右翼さらに前進します!」
かかった、この出鼻を挫く。敵を一気に殲滅する。
「全艦隊に命令。反撃を開始せよ!」


■ クレメンツ艦隊旗艦ビフレスト アルベルト・クレメンツ


「反撃命令が出た」
ワーレン、ビッテンフェルト、アイゼナッハの顔に不敵なまでの笑みが浮かぶ。
「ようやく下手なダンスを踊らずに済む」

「下手なダンスでも踊れるだけ良かろう。こちらはずっと壁の花だからな」
ワーレンの冗談にビッテンフェルトが下手な冗談で言い返す。彼の鬱憤を思うと思わず笑いが出てしまった。

「待たせたな、ビッテンフェルト提督。此処からは卿の働きが鍵となる。頼むぞ」
「任せてもらおう、では、始めるぞ」
「うむ。期待させて貰おう」

その言葉が合図のように、三人の表情が引き締まった。敬礼を交わし映像が切れる。上手くいけば敵を包囲殲滅できるだろう。妖狼フェンリルが大神オーディンを飲み込んだように……。


■ 同盟軍第三艦隊旗艦ク・ホリン  ルフェーブル中将


戦局は急激に変化した。これまで混乱していた敵艦隊が整然と反撃してきたのだ。
「敵艦隊反撃してきます!」
「うろたえるな、攻撃を続行せよ」
オペレータの報告に指示を出しつつ、戦況
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