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迷信
1部分:第一章
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歯を磨くのを止めた。そのままで何も使わずに歯磨きをするようになったのである。
 典子もそれに気付いた。それで怪訝な顔で夫に問うた。
「それも健康法?」
「ああ、そうなんだ」
 こう妻に答える。
「歯磨き粉が身体に悪いって聞いてね」
「歯磨き粉が身体に!?」
「そうらしいよ。何か歯をぼろぼろにするらしいじゃないか」
 こう雑誌の受け売りを妻に話す。
「歯が悪くなったらそれは身体全体にも影響するじゃない」
「ええ、そう言われてるわね」
「だからだよ。もう歯磨きは使わないんだ」
 そうするというのである。
「それでなんだ」
「おかしな話ね」
 妻は夫のその話を聞いてだ。女子高生の時と比べると多少肉付きのよくなった首を傾げさせた。黒い髪を少しパーマにして丸く大きな目が印象的だ。

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