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メビウス・リング
第1章 どこかの宿
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 月はいつもの様に輝いている。星もいつものように瞬いている。今日も月光は暗闇の世界を明るくしていた。加えて数軒の店の明かりも地上を華やかにしている。こういう明かりは俺達にとっては癒しの明かりだ。

 そんな中でも、ひときわ明るく浮かび上がっている食堂、そこで俺達は旅の疲れをいやしながらくつろいでいた。旅のはじめのミーティングで、各自の目的が一致した、という簡単な理由で、パーティとして登録した。公式の規定人数もクリアーしていたからだ。そしていつのまにか、ここまで到達した。

 ま、目的って言っても、そう高尚な物でもない。簡単に言うなら、「自分の職業の最高位を極めたい」、そんなところだ。

 そうそう、俺の名は、「龍神 仁」(タツガミ ジン)、仲間内では「ジン」って呼ばれている。一応剣術士を生業としている、が、俺はガキの頃からもう一つ、好きって言うか、得意な物があった。「喧嘩」である。

 ところで俺を含め、ギルドへ登録している奴らのほとんどが兼業している。俺の場合、2つ目の職は「マーシャルアーツ士」だ。ま、簡単に言うと、得意な喧嘩も職にしちまえ、ってんで登録したわけだ。兼業している理由は、表向きには、「ギルドからの給金を上げるため」って事になっているが、勿論、全て金が目的で職を調整しているわけじゃない。

 俺はこの剣術、そして、喧嘩、もとい、マーシャルアーツが、心底好きだ、そして、いつか「最高位」になってやる、と、心に秘めて、毎日、ギルドから依頼された仕事をこなしながら、自分の職に磨きをかけている。いや、俺だけじゃない!、職をもったやつは、他人からどう見られようと、心では、みんなそう思っている、はずだ。

 ちなみに「ギルド」ってのは、ここの世界で、職業や仕事全般を管理しているところだ。登録形式は「職業」。だから、職業をいっぱい持っている奴は、ギルドから依頼される仕事の量が多いが、給金も多い。それと、こういう兼業職をたくさん持っている奴は、理想論を唱えている奴からは、「職を絞れない優柔不断な奴」と、思われているらしい。

 が、少なくともこの世界では、ほとんどの奴から「器用な奴」というポジティブなイメージで取られるのが通例だ。実際、兼業をすればするほどそれぞれの職の最高位に到達する難易度は高くなるし、リスクも大きい。だから、たいていの奴は、自分のメイン職に近いか、派生した職を兼業職にしている。その方が賢明だ。それに結果として、入ってくる給金が多くなる、という点では変わらないわけだ。そう言っている俺だって、2つの職は両方「戦闘用」って意味では近い。

 そうそう、職業の印は「職業バッジ」。俺は剣術士とマーシャルアーツ士だから、ここに2つのバッジを付けている。1つは剣の形をかたどった剣術士のバッジ。もう一つは拳マークのマーシャルア
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