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三度目で
第二章

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「天下は乱れてな」
「そしてですか」
「秦は滅びる」
 そうなるというのだ。
「そしてそれからはわからない」
「天下がどうなるのか」
「また多くの国に分かれるかも知れぬし他の国が統一するかも知れない」
「秦以外の国は」
「私もそこまではわからない、しかしだ」
「皇帝は不老不死にならず」
「死に天下は乱れるかも知れない、暫くは様子を見るべきだ」
 これが張良の判断だたt。
「このまま身を隠してな」
「そうされますか」
「時が来れば動く用意をしておこう」
 張良は力士に言った。
「今はな」
「わかりました、ではそれがしも共に」
 ここにいると言ってだ、力士はその張良と共にいることを誓った。そうして暫くの間下?に潜むことにして実際にそうしていた。だが。
 二人で畑仕事をしてその帰りにだ、家への通り道の橋を渡ろうとした時にだ、二人の目の前に見慣れない老人がいた。
 その老人を見てだ、力士は言った。
「はて、あの老人は」
「見ない顔だな」
「この村の者ではありませぬな」
「かといって秦の者でもないな」
「はい、黒い服ではありませぬ」
 秦の色は黒だ、だから官吏も将兵も黒い服だ。しかし老人の服に黒いものは何一つとしてなかった。
「何処かの仙人でしょうか」
「それが山から降りて来たか」
「そうでしょうか」
「神仙の教えなら教わりたいが」
 張良はこう言った。
「しかしな」
「何者かわかりませぬし」
「今は話すことは止めよう」
「そうされますか」
「うむ、ここはな」
 張良は老人をやり過ごすことにしてだ、そうして。
 老人の横を通り過ぎて去った、だが。
 老人は不意にだ、自分の靴を脱いでだった。
 地面に放り捨ててだ、張良に言った。
「そこの若者」
「それがしのことですか?」
「そうじゃ、御主にじゃ」
 振り向いた張良に言うのだった。
「靴を拾ってくれるか」
「それならそれがしが」
 力士が靴を拾おうとする、だが。
 老人はその力士にはだ、こう言った。
「よい」
「よいとは」
「御主には言っておらぬ」
 こう言うのだった。
「そこの女の様な顔の者に言ったのじゃ」
「子房殿に」
「そういう名か、とにかくじゃ」
 また張良に言うのだった。
「御主が拾え」
「その訳は」
「訳なぞないわ」
 力士の問いにだ、老人は素っ気なく返した。
「そこの奴に拾わせたいのじゃ」
「この老人何なのだ」
 力士は老人の言葉を聞いて首を傾げさせて返した。
「何故子房殿にそう言う、因縁をふっかけておるのか」
「ははは、そう思うか」
「そうであれば去られよ」
 力士は老人に強い声で言った。
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