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或る画家の遺言。
前置き
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に未だにブランドプライドが高い為、内部試験はしっかりあります。情け容赦ない成績の振るい機が待っているのです。
私は昔から勉強が嫌いです。
必要だと思いますが、嫌いです。しますけれどね。
正しくは、勉強が嫌いなのではなく、“勉強に時間を取られること”が嫌いなのです。
何故なら、私は絵を描くことが好きだから。
できる限りそちらに時間を割いていたいと願ってきました。
学校の美術部に所属しており、小さい頃から絵が…特に、鉛筆絵と水彩が好きです。
好みとしてはこの二つが。
しかし、その年は趣味の時間を削り、嫌が応でもある程度勉強に徹しなければならなかった。
…とは言っても、当初の志望学部をクリアするにはそこまで力を入れずにもできる程度でありましたから、それまでと比べると些か勉強時間は増えはしたものの、実を言うとそこまで真剣に取り組んでいたわけでもありませんでした。
先程も記述したとおり、勉強をする時間があれば、私は絵を描いていたかった。
そして、大好きな友達との時間を過ごしたかった。


友達というのは、他でもない、新田由生(にったゆうき)です。
君は由生を知っている人間だろうか?
知っていたら、少し嬉しい。
彼との付き合いはもう長い。
初等部からの友達です。
どのような奴かと聞かれても困ります。
付き合いの長い間柄ですが、彼を誰かに紹介するとしたら、端的で分かりやすいのは“病弱な御曹司”でしょうか。
雰囲気が薄く、儚げで白が似合うようにできています。
いい奴です。夢見がちで。
彼は小学四年生の頃、難しい、何だか普通ではない希な病気と診断され、臓器を崩し、手術をして一度は治りましたが再発し、ドナー待ちの状態をもう約十年、続けていました。
元々、小学生の頃までのんびりとした性格でしたが、それ以降学校や社会にあまり触れることが無かったせいか、実におっとりとした、絵に描いたような爽やかさと穏やかさを持っています。
私や、普通に生きている人間は、小学校高学年とか中学を境に、それまできらきらとしていた夢に溢れた美しい世界を見る目が、じわじわと曇って膜が張ったように輝きを失い、鈍色化し、それを直視することも美化しようとすることにも冷め、疲れ、諦めを覚えますが、由生はそれがありません。
例として会話の題材をあげましょう。
由生が嬉しそうに話す日常の会話といえば、今日の空が青いだとか、雲が変な形をしているとか、誰々が花を持ってきてくれたとか、病院前のハクレンが綺麗だとか、小説が面白かったとか、デジタル時計の秒までのぞろ目の瞬間を見たとか、新しい私服を買ったとか、星が綺麗だとか…。
本当に、冗談抜きでそんな話ばかりなのです。
それから物欲が乏しくて、些細な物で喜びます。
今時、多少綺麗とはいえ、桜の枝一本で声を上げて喜ぶ男がい
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